サラリーマンNEO流、「自分を変える」技術 30過ぎまで不発の人間でも、変われるか?

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これは映画だ。そして僕は初心者だ。初心者の気持ちで撮影に臨もう。そう、完全に切り替えました。自分をRPG(ロールプレイングゲーム)の主人公に見立て、映画スキル・レベル1から始めるのです。

とにかく周囲には、質問しました。テレビと映画の違いを楽しみました。絶対に「テレビでは……」という言葉を吐かないように、心掛けました。するとだんだん周りの動きが変わってきました。撮影最終日には、映画のスタッフからサインをねだられるまでになったのです。あるベテランの助監督が言いました。監督にサインなんて初めてだと。映画のパンフレットでは、ある女優さんが「人ってこんなに変わるんだ。監督かっこよかったです!」とコメントしてくれていました。

初心者になったことで、なぜ褒められたり、慕われたのでしょう。振り返ってみると、自然と器が大きくなっていたのではと思います。そもそも器が大きいって、大きな人間になるイメージを持っていました。だけどよくよく考えると、

器って、中身なにも入ってないじゃん!

吉田さんの「変わる技術」については、著書『発想をカタチにする技術』にも詳しい

あれ? では、器の大きいってなんだ? あ! 受け入れる度量が大きいってことか!と気づいたのです。

ということは、もしかしたら何でも吸収する赤ちゃんが、いちばん「器が大きい」のかもしれません。人間は成長するにしたがって、器が小さくなっていくのかもしれない。初心者になったことで、言い換えれば映画の赤ちゃんになったことで、器が大きくなったのだと思います。確かにこの人尊敬できるなという人は、どこか子供みたいな部分があります。

こんな感じで、自分から離れることが、変わる第一歩です。最初は大きなことからでなくてもいいです。僕はよく「この1週間は、すごく親切にしてみよう」とか、「この1週間はファッションにこだわろう」とか、「普段は絶対に見ない恋愛映画を見よう」とか試みます。さしずめRPGで言えば、本筋と関係ないミニゲームで遊んでいる状態でしょうか。そんな訓練をしていると、だんだん自分から離れるスキルが上がります。

さて、長くなりましたので、今回はこのへんで終わりにします。次回の記事では、この後、さらに僕が「変わった」経験について書きたいと思います。せっかく「サラリーマンNEO」でブレイクしたのに、40過ぎである番組のイチスタッフに……。それをいったい、どう乗り越えていったかなどなど、みなさまのお役に立つ話になれば幸いです。

(※この記事の後編は、2月10日(月)公開予定です)


 

吉田 照幸 NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー

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よしだ てるゆき / Yoshida Teruyuki

1969年、福岡県生まれ、山口県育ち。1993年NHK入局。NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー。「のど自慢」「小朝が参りました」などエンターテイメント系の番組を中心に活躍。広島放送局を経て番組開発部移動後、2004年に「サラリーマンNEO」を企画、以後全シリーズの演出を担当。型破りな番組として人気を博す一方、タニタの社食、Google本社を日本のテレビ番組として初潜入、コントに日産のカルロス・ゴーン氏を引っ張り出すなど、話題となった

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