もう迷わない?梅田駅を「大阪梅田駅」へ改称 阪急・阪神が10月から実施、京都でも変更

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一方、京阪は著名な観光地の名を冠した駅名への変更を行っている。2008年には京都市内の丸太町・四条・五条の3駅を、付近の有名観光地にちなんだ「神宮丸太町」「祇園四条」「清水五条」に変えた。丸太町は平安神宮に近いこと、四条は全国的に知られる「祇園」の中心であること、五条は清水寺の最寄り駅であることからの命名だ。

同社は2018年にも、浜大津駅(滋賀県大津市)を琵琶湖観光の玄関口であるとして「びわ湖浜大津」に、坂本駅(同)を比叡山観光の拠点として「坂本比叡山口」に変えるなど、4つの駅名を変更。今年10月には八幡市駅(京都府八幡市)を、2016年に本殿などが国宝に指定された神社の最寄り駅であることから「石清水八幡宮」に変える。

観光客の利用増を期待

長年「私鉄王国」と呼ばれてきた関西。国鉄(現JR)の主要駅に隣接した同名のターミナルに発着するのが一般的な関東の大手私鉄に対し、関西大手私鉄は地元利用者にとって便利な繁華街などに独自のターミナルを構えた例が目立つ。「街のどこに着くのか」を具体的に示す「梅田」「河原町」といった駅名も地域密着サービスの1つの表れといえる。

だが1990年代以降、関西大手私鉄各社の輸送人員は景気の低迷や沿線人口の停滞、JRの競争力強化などによって減少が続いた。近年は再び上向いているが、その主な原動力はインバウンドなどの「定期外客」だ。30年前の1989年度には各社とも定期客が6割を上回っていたが、2017年度は最も定期客の割合が高い近鉄で約59%。阪急、阪神は定期と定期外がほぼ半々、京阪は定期外が定期客を上回っている。

沿線外から訪れる不慣れな利用者に向けては、「京都」「大阪」といった広域的な地名や、有名な観光地名での案内がより重要となる。阪急は今回の駅名変更により、大阪や京都を結ぶ路線であることがわかりやすくなることで「観光客などの利用増加を期待している」と話す。

都市名や観光地名を冠した駅名への変更は、沿線人口増加が見込めない中、観光客をはじめとする沿線外からの利用者獲得に向けた各社の思惑の表れといえそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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