生涯結婚しない「子ども部屋おじさん」が急増

日本が「存続の危機」にさらされている?

子どもが実家からなかなか独立しない(できない)大きな理由の1つとして、親子同居のメリットの大きさが挙げられます。例えば、子どもが社会人になってからも両親と共に3人で暮らしている場合、OECD(経済協力開発機構)の計算方法を用いると、一人暮らしをしたら100万円かかっていたコストが58万円程度で済むのです。

年金を受給している祖父母も加わって5人暮らしをしているともなれば、1人当たりのコストは45万円程度にまで下がります。一人暮らしに比べ、親との同居は圧倒的にコスパがいいのです。

経済的なメリットのほかにも、食事の支度や掃除、近所付き合いを親頼みにできることなど、子どもにとってさまざまな利点があります。しかしその一方で、「結婚しても家のことが何もできなさそう」というイメージが先行するようで、「実家住まい」の男女は婚活市場では人気がありません。

母親の歪んだ“息子愛”が元凶だった!?

また、2016年に実施された興味深いアンケート調査結果があります。母親と父親が、その息子・娘に対して<いつ頃までに結婚してほしいか>を尋ねたところ、父親から息子・娘への結婚希望時期は「20代後半まで」が1位、母親から娘への結婚希望時期も「20代後半まで」が1位であるのに対し、母親から息子への結婚希望時期だけは「30代前半まで」が約4割を占め、1位となっています。

しかし先ほども話しましたが、30代前半になるとすでに同年代では未婚女性が3割程度しか残っていません。では、若い女性と年の差婚をと考えても、初婚を目指す男性についての年の差婚の発生確率は厳しいのです。

「子ども部屋おじさん」を生み出す元凶の1つに、母親による「男の子の結婚は、女の子より遅くていいのよ」という意識があることを、指摘できるデータといえるかもしれません。

「最近の子は親に甘えて親から離れられない」という意見を持つ人もいるかもしれませんが、1つ強調しておきたいのは、子ども側の独立志向は以前に比べて高くなってきているということです。

あるアンケート調査結果では、「できるだけ早く独立したい」あるいは「親との同居は、自分に経済的自立ができるまで」と考えている若い未婚男性は合わせて7割近くもいることがわかりました。父親世代ではその割合が4割以下だったにもかかわらず、です。

日本は1995年以降、既婚者と未婚者を合わせた出生率の合計特殊出生率が1.5未満となる超少子化社会に突入し、すでに20年以上が経過しています。統計的に見ると、日本の既婚夫婦が持つ最終的な子どもの数は長期的にはあまり変化がなく、2人程度で推移しています。

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また、婚外子(結婚している夫婦以外のカップルに生まれる子ども)の割合は極めて小さい国なので、統計上有効な少子化対策としては、夫婦の間に生まれる子どもの数を増やそうとする従来の「子育て支援策」よりも、急増する「未婚化対策」により真剣に取り組む必要があるのです。

政策としての未婚化対策がよい結果を出せなければ、日本はこのまま民族絶滅の危機、すなわち<絶滅指定危惧種>に指定され続けます。すでに中国やアメリカの知識層からは「(民族絶滅により)日本の文化が消えてなくなるのは残念だ」といった声までも上がっています。

データからは「子ども部屋おじさん」が急増する背景には「わが子かわいさ」のあまり、いつまでも息子との同居を許してしまう母親と、そんな妻(子ども)のありように無関心な夫、という日本の夫婦の姿が見え隠れします。しかし年齢差を考えれば、親が子どもの「生涯の伴侶」になることはできないのです。また、子どもは親のペットではありません。

この日本で、先進国のなかでは異例の割合で子どもを「子ども部屋」に囲い続け、親離れさせないのはいったい誰なのか――。私たちは考える必要があるのではないでしょうか。

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