18きっぷ、「時間と心に余裕を生む」ひと工夫 遅延やトラブルだって鉄道旅の楽しみだ

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ゆっくりと進む船旅は、一気に新幹線で渡ってしまうより遠さと旅情を味わえる。

八戸のみろく横丁(筆者撮影)

甲板で潮風に吹かれながら、どこまでも続く青空と海の向こうに望む津軽半島や下北半島を眺めれば、青函連絡船はこんな雰囲気だったのかな、という追体験もできる。

北海道へは八戸から苫小牧に向かうシルバーフェリーもある。八戸の屋台村、みろく横丁で飲んでから夜行フェリーに乗る、なんてことも楽しい。

翌朝下船すると「ようこそ苫小牧へ」という文字とともに苫小牧市イメージキャラクターのホッキー君が描かれた掲示板が出迎えてくれ、ああ北海道に来たのだ、と実感する。このように、18きっぷは旅のひとつの選択肢として、適材適所に使うとより効果的になるように思う。

遅延・運休すら楽しむ

そして18きっぷの旅に限った話ではないが、出かけていると交通トラブルに出くわすことがある。大雨や大雪、事故や故障によって、列車の遅延・運休の憂き目にあう。こんなとき、どのように対処すべきだろうか。

大前提として「18きっぷは列車の遅延・運休等のトラブルが起きても何の補償もない」ということを挙げておきたい。このことを理解しているかどうかで、気の持ちようも変わる。前回「18きっぷは余裕を持った行程を組もう」と書いたことがここでも効いてくる。

トラブルの際、たまに18きっぷ利用者が特急や新幹線に乗せてくれ、と駅員に交渉している場面を見かけるが、それはできない相談である。確実に目的地に向かいたいのであれば、ある程度の補償が期待できる通常の乗車券と特急券を用意すべきだ。18きっぷ利用者はトラブルのときこそ、どうリカバーするか検討する楽しみができた、とプラス方向に考えたい。

以前、奥羽本線で青森に向かっていたときのことだ。青森まであと30分、浪岡という駅に到着しようという頃、運転席でピピピという信号音が鳴り、なにやら無線の声が聞こえてきた。嫌な予感がした。

「お客様にお知らせ致します。この先の鶴ヶ坂駅にて信号機故障が発生しました。現在原因を調査中で、浪岡駅で運転を見合わせます」

信号機故障となれば、長引くことは必至である。予想どおり、列車が動く気配はまったくない。幸いこの辺りでは比較的大きな駅、路線バスがあるのではないかと改札を出てみると、はたして青森行きのバスを発見した。青森までは列車の倍近い1時間を要するが、その後の時間が読める。私は迷わず乗車した。実際バスの車窓から、1時間以上前に通過しているはずの駅に列車が停車している姿をいくつか見かけた。

トラブル時、他の交通手段がない場合は代行バスや代行タクシーが出ることもある。普通列車の代替であれば18きっぷで乗車も可能だ。その時々の状況に応じて、どんな迂回ルートがあるのか考え、いっそ行き先を変えてしまったってよい。これこそ旅の醍醐味だ。一度切り抜けると、次に同様な状況になったとき心の余裕も出てくる。

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