トランプ「対イラン戦争決断のXデー」は来るか そのとき株価や原油価格はどうなるのか?
一方で民主党の戦略は、今のところ足並みがそろっていない。ナンシー・ペロシ下院議長がジレンマに陥っているのは、予備選で進歩主義者の挑戦を受けるベテラン議員が大統領の弾劾を諦めない一方で、逆に4人の若手女性議員に代表される進歩主義者は、極端な社会主義政策を掲げていることだ。そのどちらもまだ効果が出ていない。
その証拠にアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)下院議員の「国境を開放しろ」との寛容すぎる移民政策は逆効果だった。直近の調査では、彼女の支持率は地元NYの選挙区で21%へ急落。不支持は40%を超えた。
また、ミネソタ州の選出でイスラエル強硬派へ敵対的な態度をとるソマリア出身のイルハン・オマル下院議員の支持率はなんと9%まで下落。不支持は50%まで拡大した。このチャンスをトランプ大統領が逃すはずがない。リベラル系高級紙のATLANTICは、アメリカ人の80%が「ポリティカルコレクトネス」(差別や偏見などに基づく社会制度・言語表現は是正すべきとする政治的な考え方)に反感を感じているとを嘆いたが、トランプ大統領の女性議員に対する「国に帰れ」の発言は、実はこのあたりのアメリカ人の心理を計算してのことだ。
では、このままイラン問題はなんとかなるのか。残念ながら、個人的な予感はノーだ。特に、株が下がり、経済が悪化してくるとその確率は高まる。 では起きてしまった場合、どんなことが起きるか。2003年のイラク戦争で上がったものは株だけでない。商品相場を網羅したCRB指数は、2008年のリーマンショックまでの4年間で3倍になった。
もしサウジとイランの両方の石油施設が攻撃されたら
今、世界の中央銀行はインフレ目標に届かないという理由で緩和策を続けている。原油は余っているが、サウジとイランの両方の石油施設が攻撃されても、原油価格は大人しくしているだろうか。そしてイランが攻撃を受けた場合、イランはマルウェア「スタックスネット」で自国の核施設が攻撃を受けてから、自分で世界有数のサイバー攻撃部隊を整えた。
いずれにしても、何らかの理由で生活物資が値上がりするインフレが起これば、現在世界で進行中の中央銀行による緩和策は、ガソリンを積んだ消防車のようなものだ。中央銀行は今の緩和策は継続できないだろう。そんなことになれば、トランプ大統領の再選は窮地になる。その前に、リーマンショック以来、中央銀行のサポートの中で続いていた市場のユーフォリアは終わる。
キリスト教と英語をコアにしたアングロスフィアは、彼らがファシズムを倒し、共産主義から世界を守ってきたという自負がある。衰えたとはいえ、国土の小さい英国はアメリカ以上に覇権主義時代の名残があり、英国の地政学者ハルフォード・マッキンダーのハートランド理論では、イランの国土は最後の聖域の一つ。今日EUからの合意なき離脱のインタビューに答えたボリス・ジョンソン氏は、「英国は臆病になっている。今はCAN DO精神が必要だ」と言っていた。そして、そのハートランドとほぼ重なっているのが中国の一帯一路である。
今、この地域の思惑を整理すると、①イランは中国に原油を輸出②中国はロシアにインフラを輸出③ロシアは中国に天然ガスを輸出。そして北朝鮮はイランに武器を輸出する可能性がある。これらの経済活動を、ドルを使わず中国元やそれを担保する金で決済すれば、金は上がりドルの支配は揺らぐ。そうなればトランプ大統領個人の去就など関係なく、「アメリカ特別主義」(アメリカは世界平和に貢献できる唯一の特別な国であり、だからこそ積極的に世界の問題に関わり、世界を平和に統治しなければならないという覇権主義)の信者たちも動くだろう。
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