トランプ「対イラン戦争決断のXデー」は来るか そのとき株価や原油価格はどうなるのか?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そしてもう一つが、イスラエル援護説である。もちろん、イスラエルがイランの核開発を容認しないのは当然である。だが、イスラエルは本当に強硬派のボルトン氏が主張する、イランのレジームチェンジ(体制変革)まで望んでいるだろうか。実際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はシリアを挟んでイランを擁護するロシアやトルコとの関係も重視している。

さらに、今でこそイスラエルはスンニ派のアラブ諸国と、トランプ政権の仲介で表面上は友好的になっているように見える。だが「カショギ事件」を見るまでもなく、アメリカではリベラルと民主党はムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)の現サウジ政権を快く思っていない。

ならば、アメリカが民主党政権になった場合、サウジはどう出るのか。イスラエルが安穏とすることはできない。むしろ、1980年のイラン・イラク戦争でイスラエルがイランを武器供給で援護したように、ある程度イランが強く、アラブ諸国と永遠に敵対してくれる方が有利なはずだ。

イスラエルとしては、「イランが核を持たない」「ヒズボラやハマスを援護しない」、などが担保されるかどうか。1980年当時、その策略にまんまと乗ってイランと戦争を始めたサダム・フセインを「アラブの大バカ者」と罵ったのが、あのオサマ・ビンラディンだ。結果、彼がアルカイダを立ち上げるきっかけとなった米軍のサウジ駐留をここにきて16年ぶりに増強するというのは、歓迎すべき話ではない。

サウジにとって、今のイランは「天敵」

そして問題は、仮に奇跡的にイスラエルとイランが妥協できたとしても、サウジはそうはいかないことだ。サウジは、伝統的に国王は親米だが、国民は過激思想を内包する二重構造だ。国民を潤していたオイル収益に陰りが見える今、親米だったパーレビ国王を追い出し、宗教家のホメイニ氏を選ぶ革命を成功させたイランの二の舞は困る。

つまり、サウジにとって今のイランは、「スンニ」「シーア」の宗派対立を超え、王室の体制維持でも、絶対妥協できない天敵である。このサウジと前回のコラム「トランプ大統領の敵は中国でもイランでもない」で紹介したミアシャイマー教授の言うところの、イラクとシリアという低いところに成っている実を中途半端に処理した人々。彼らは結果的にイランの勢力を助長してしまった。

ならば、彼らはトランプ大統領の意向に関係なく、最後までイランのレジームチェンジを諦めない可能性が高い。大統領が誰であっても教理が揺るがないボルトン氏。また政治家として、次の次あたりを睨んでいるマイク・ポンペオ氏。彼らは、イラン革命前にアメリカに来た100万人超のイラン系アメリカ人、そして国家としてイスラエルの保全がキリストの復活につながると信じる「ジュデオ・クリスチャンシオニスト」(Judeo-Christian、福音派に多い)を前に、強硬的な態度を続けている。

次ページ今後、トランプ大統領はどう振る舞うのか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事