凍った地球 田近英一著
人類はいま、喫緊の課題として温暖化対策に追われているが、時間スケールを大きく伸ばすと、現在の地球は「温暖湿潤期」ながら新生代後期氷河時代の真っただ中にある。もともと大規模変動を伴った46億年の地球史からすれば、歴史的に環境安定期はそう長かったわけでもない。
その大規模な環境変動の例に、かつて3度にわたり地球の表面は完全に氷で覆われていたというスノーボールアース(全球凍結)仮説がある。これにより生命は大絶滅の危機に瀕する極めて過酷な試練を強いられたという。本書において著者は、そのスノーボールアース仮説と、それがもたらした新しい地球史観を、好奇心旺盛に探究していく。決め手は地層、それも「氷河堆積物」の観察にある。
本書は、「天文少年」がすくすくと育ち、少壮の地球物理学者となった著者のいわば「探偵ミステリ」といえる。自然科学好きばかりでなくミステリ好きの読者にも好適だ。
新潮選書 1155円
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