京都中心と南部でまったく違う「高速網の役割」 南部のJCT・ICは関西の生産・物流拠点に変化

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まして、次々とマンションやホテルが林立し、日々町家が消えて古都らしい景観が失われつつある京都の町なかに、さらに景観を損ねかねない高架の高速道路が通ることは、渋滞に悩まされている市民であっても、もろ手を挙げて賛成できないだろう。

パリやロンドンなどヨーロッパの大都市の中心部に高速道路の高架橋がないのも、都市景観の維持にことのほか厳しいことを考えればある意味当然である。

物流拠点になりつつある京都府南部

このように京都市中心部には、高速道路の恩恵はなかなか行き渡らない一方で、第二京阪道路や京奈和自動車道が通る京田辺市や城陽市などの京都府南部は、現在、その交通の至便性を生かして関西の生産・物流の拠点になりつつある。

というのも、現在一部で開通している新名神高速道路が東は草津・大津方面から、西は高槻方面からこのエリアで結ばれる予定があるからだ。すでに、城陽JCT・IC~八幡京田辺JCT・ICの3.5kmは開通し、2023年度には全線開通が見込まれている。

今年5月にはこの区間に沿った場所に外食チェーンのリンガーハットの大規模な工場が稼働を始めたほか、ネット通販世界最大手のアマゾンが八幡京田辺JCT・IC付近に大規模な物流拠点を建設しており、今年秋には稼働を始める予定だ。

また、昨年は城陽JCT・IC付近に、郵便物やゆうパックの区分け専門の「京都郵便局」(京都駅前にある京都中央郵便局とはまったく別の機能を持つ大規模集配局)がオープンした。今後新名神の全通が近づけば、京阪はもちろん、滋賀、奈良、和歌山にも直結する関西の結節点として一層注目を集めるエリアとなろう。

「観光公害」に悩まされ、古都の静けさを取り戻したい京都市中心部と、経済的な地盤沈下の進行を少しでも食い止めるべく関西の拠点を目指す京都府南部。それぞれの役割を果たすために、高速道路の存否は重要なファクターであり続けそうだ。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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