「高学歴ワーキングプア」39歳独身男性の悲哀 都内の大学で客員教授だが、月収は15万円

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幸い、大阪の大学で任期付き専任講師のポストを見つけることができた。しかし、ここもマコトさんが思い描いていたような職場ではなかったという。

着任時、学校側から「授業に出ない学生などは呼び出して説得してください。中学や高校の担任と同じだと思ってください」と言われ、耳を疑った。しかし、実際に一向に授業に出てこない学生や、試験でカンニングがばれた後も呼び出しに応じない学生は少なくなかった。そうした学生を捕まえるため、彼らが選択している授業の教室や、アルバイト先まで出向いて待ち伏せするという、およそ大学教員とは思えない仕事に忙殺された。

「原因は、大学が学生を集めるため、合格水準に達していない学生まで入学させてしまったことです」とマコトさん。同僚との人間関係がうまくいかなかったことや、うつ病と診断されたこともあり、勤続3年目で、東京の実家へと戻った。1年前のことだ。

あれ? 最初、母の手術のために仕事を辞めて東京に戻ったと言っていなかったか――。私がそう尋ねると、「タイミングがたまたま重なったんです」。

目下の心配ごとは「兄の将来」と言うが…

すでに父親は他界。実家では、母親と兄と同居している。今、マコトさんはこの兄の将来が心配でたまらないという。

「兄は社会的なことが何もできない。『大人の発達障害』だと思うんです。仕事も、ハローワークで100社応募してやっと決まるという感じ。今のアルバイト先は月収20万円ですが、深夜まで働いても給料が変わらないようなブラック企業です。長く働き続けられるようなところじゃないんですよ。障害者手帳を取るべきだと思って、私が自治体に相談したりしてるのに、やっぱり母は協力的じゃない。家族は私の話を全然聞こうとしない」

確かに、深夜手当を払わない悪質企業は許すべきではない。ただ、現時点の収入だけを比べたら、マコトさんよりも兄のほうが多いのも、また現実である。

いずれにしても、現在の月収15万円では、マコトさん自身「どうしようもない」。大学の専任教員になりたいという夢はあるが、博士号がなければ難しいこともわかっている。そう思って、民間企業の転職サイトにも登録をしたが、早々にショックを受けた。

「提案されるのが、中古車販売店の店長とか、警備員とか、チェーンの飲食店とか、工場内のクリーンルームでの作業とか――。そんな(自身の専門分野とは関係ない)仕事ばかりだったんです。長年、公民連携というテーマを持ってやってきたことを否定されたようで……。現実の厳しさに愕然としました」

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