外国人客はバスを「グーグルマップ」で検索する 岐阜県・馬籠宿の路線バス調査で見えたこと

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中津川市定住推進課の柘植良吾主査は、GTFS-JPのデータ整備を進めたことについてこう語る。

馬籠宿には宿場町だったころの町割りが残り、多くの観光客が訪れる(筆者撮影)

「利用者が減っていて地域公共交通網の維持が危ぶまれていることや、生産性向上の取り組みが叫ばれている中、インターネットでの検索ができないことで利用者を逃すことがあるならば、それを見過ごすわけにはいきません。また新たな利用者の掘り起こしにもつながるので『できることからどんどんやっていこう』という思いでデータ整備に取り組みました」

当初は中津川市のコミュニティバスのみデータを整備する予定だった。しかし、地域の公共交通網すべての検索ができることが望ましいという視点から、地元バス事業者である北恵那交通の協力の下、同社の路線を含めた中津川市全体でデータ整備を行った。市自らの力で地域公共交通網形成計画を策定したからこそできたことであろう。

今回の調査結果について柘植主査は、「外国人旅行客はガイドブックだけではなくグーグルマップの経路検索を利用して馬籠線のバスを知る人が多いことがわかりました。中津川市が整備したバス情報をグーグルマップで経路検索できるようにしたことで、利用環境整備として効果が出たことも感じました」と話す。

「検索できる」PRも必要

その一方で、現状は必ずしも十分でないことも調査結果から見えてくる。「求めているバスのサービスについて」の回答では、多くの外国人が「フリーWi-Fi」を求めているのと同時に、すでに可能であるはずの「グーグル検索でバスの時刻がわかること」を求めているとの結果が出た。

市が行ったアンケート調査でわかることは、データの整備とともに「情報発信」が重要だということだ。グーグルマップで発信していても、「検索が可能」ということが知られていなければ使ってもらえない。検索できることが知られていなければ利用されることもない。ガイドブックやWebサイトで「グーグルマップ」で最新情報がわかることを示すことも重要であるといえよう。

「『どのように馬籠行きバスを知ったか?』という項目では(運行会社である)北恵那バスホームページという回答は少なく、公共交通の利用促進にはさまざまな媒体や関係施設のホームページなどにバス情報を掲載してもらうなどの工夫が必要と感じました。また、妻籠宿へ抜ける外国人観光客が多いので、周遊できる仕組みとして公共交通と観光の連携も必要と感じました」(柘植主査)

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