広島、豪雨被災地を支えた「臨時バス」の舞台裏 「災害時BRT」の経験、今後にどう生かすか
中国地方を中心に甚大な被害をもたらした西日本豪雨から、この7月で1年が経った。
豪雨災害による鉄道の不通は、地域の通勤・通学に大きな影響を及ぼした。中でも広島市と呉市の間、約30kmは移動の需要が多く、鉄道が復旧するまでの交通の確保にさまざまな工夫が行われた。その中で交通関係者の注目を集めたのが、通行止めとなった自動車専用道路を活用したバス輸送システム「災害時BRT」だ。
今後の日本の公共交通における災害対策はどうあるべきか、広島―呉間の災害時BRTを例として関係者のインタビューを交えながら考えていきたい。
通常50分のバスが3時間半
広島県の地質は花崗岩が多く、風化すると雨でもろくなりやすい「まさ土」となる。そのため土砂災害が起こりやすい。2018年7月の西日本豪雨では、県内で土砂災害が1200カ所以上発生した。
7月5日に降り始めた雨は激しさを増し、翌6日の夜には大雨特別警報が発令。7日午前にかけて降り続いた豪雨により、広島と呉を結ぶ国道31号と有料道路の広島呉道路(クレアライン)、JR呉線が海岸沿いを束になって走る坂町水尻地区でも土砂崩れが起き、広島呉道路は崩落。JR呉線と国道31号も大量の土砂で埋まってしまった。
広島市と呉市の間は1日に約1万8000人の通勤・通学者が行き交う。その動脈である鉄道と道路が寸断されてしまったのだ。
9日早朝には内陸部を経由して両市の間を行き来することは可能になったが、迂回路に車が集中し、路線バスで広島から呉へ移動しようとすると5~6時間かかるという状態だった。国道の仮復旧と広島呉道路の一部再開を受け、13日からは広島電鉄の高速バスが「災害時臨時輸送バス」として運行を始めたが、平常時の高速バスなら40~50分の両市間を最大3時間半かけて走っていた。
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