ジャニーズ「圧力疑惑」への対応に浮かぶ大疑問 証拠の有無は問題ではなく解釈が甘すぎる

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もともとテレビは芸能事務所ではなく、世間の人々やスポンサー企業あってのビジネスモデルだけに、「圧力」「忖度」という疑惑がある以上、あらためて「何を最優先に守るのか」を明確にしておく必要があります。

公取委の次なるアクションに期待

すでに多くの人々が気づいているでしょうが、公正取引委員会が芸能事務所の圧力に関して動いているのは、元SMAPの事例だけではありません。

昨年2月から「独占禁止法を芸能人に適用して保護しよう」「契約問題で窮地に立たされたタレントを守ろう」という動きがあり、なかでも多くの騒動、疑惑の報道、ファンの悲痛な声があがっていたジャニーズが真っ先に“注意”の対象になっただけで、他の事務所も例外ではないのです。

「契約問題で窮地に立たされたタレント」で世間の人々が思い浮かべるのは、のんさん(旧芸名・能年玲奈さん)でしょう。

のんさんをめぐっては、「独立を機に多くのメディアから締め出された」「本名である芸名を変えなければいけなかった」「本人に問題があるような内容の記事を流布された」などの事実や疑いがありました。公正取引委員会としても、精力的な姿勢を見せておきたいでしょうし、近いうちに何らかの動きを見せる可能性は十分ありそうです。

「育てるのに時間・お金・人材をかけたから独立や移籍をされると困る」という理屈は、芸能界だけでなく、どこの業界も同じ。現代社会では「芸能界は例外」と自らを特別視するような姿勢は通用しなくなっていますし、古い感覚にしばられていたら支持を失っていくでしょう。

とりわけ元SMAPの3人に対して世間の人々は、「十分すぎるほど事務所に恩義を返してから退社した」とみているため、「圧力をかけるジャニーズは許せない」「忖度するテレビ局は情けない」という気持ちになっています。

ジャニー喜多川さんの追悼映像としてSMAPの映像がひさびさにテレビで流れたとき、多くの人々が喜びの声をあげました。やはり彼らは日本中の人々から愛されているだけに、現在の状況が少しでも早く改善されることを願っています。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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