外国人が驚いた日本の「魚料理」の当たり前 魚焼きグリルや昆布を使う技術に驚嘆

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執筆に際し、シアトル公立図書館で、57冊もの英語で書かれた日本料理の本を読み込んだフリン氏。バランスよく食べるために5色の食材を組み合わせる考え方や、漬物の作り方を知り、買いすぎてしまった野菜をピクルスにするなどその知恵を生活に取り入れるようになったという。

みりんやしょう油、米酢など日本の調味料にも興味を持ち、「数少ない調味料で、合わせ方によってバラエティー豊かな料理ができるのはとても興味深い」と語る。そんなフリン氏がとくに気に入ったのがみそだ。

「以前、すしを食べたときの献立で気に入っていたのが、みそ汁でした。そこから私は夢中になって10種類ものみそを買いました。今でもみそを数種類冷蔵庫にストックし、スパゲティソースなど、何にでも入れて料理しています」

日本人には魚に対する敬意がある

日本人と魚の「親しみ方」にも驚くポイントがあったという。

「日本ではたくさんの魚がちゃんと消費されています。私は取材で魚のさばき方を学んだ東京すしアカデミーでヒラメの肝臓を食べさせてもらい、とてもおいしくて感動しました。魚になじんで育った私ですら、肝臓を食べることは思いもよらなかったからです。

Kathleen Flinn/作家、ジャーナリスト、料理家、IACP(国際料理専門家協会)理事。マイクロソフト勤務などを経て、渡仏。2005 年に37 歳でフランスのル・コルドン・ブルーを卒業後、アメリカに帰国。2007 年、『36 歳、名門料理学校に飛び込む!』が、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーに選ばれる。2017 年、『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』が日本でベストセラーに(撮影:梅谷秀次)

また、魚をどのように獲り、締めて新鮮さを保つかについて、とてもよく考えられていることに感動しました。それは、魚に対する敬意だと思う。アメリカの水産企業では、新鮮さを保つことが必須とされていないのです」

フリン氏が、日本の魚食文化を「敬意を払うべき完璧さ」があると考えるのは、日本の歴史や、すし経済と歴史をたくさん調べたからだ。

「アメリカには200年しか歴史がありません。なので、日本でとてもたくさんの固有の歴史があることに驚いたのです。私はフランスにも住んだことがあるので、やはり固有の歴史を持つフランスと比べることが、日本の歴史を理解する助けになりました。日本の歴史を読めば読むほど、その文化がどこから来たのかがわかり、魚食文化についても、よく理解するのに役立ちました」と話す。

フリン氏が日本の魚食文化に感銘を受けたのは、日本とは大きく違うアメリカの魚食文化があるためかもしれない。先祖がスウェーデン人だというフリン氏自身は、子どもの頃から魚料理が好きだったというが、一般のアメリカ人にとって魚料理に親しみを持っている人はあまり多くないのだ。

「魚にはとてもたくさんたんぱく質が含まれ、野菜的な要素と多少のデンプン質もあります。イギリスでは肉であり、2つの野菜でもあると言います。しかし、アメリカで魚は“皿に載った小さな一切れ”にすぎないことが多い。そこにアメリカ人の考え方が表れていると思います」

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