参院選、野党の選挙公約の何が問題なのか 財源の裏付けなき「バラマキ公約乱発」の罪

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小さな政府を指向する日本維新の会は、どちらかというと大きな政府志向の立憲民主党や国民民主党とは趣が違う。同党の場合、「議員報酬3割カット」「議員定数3割カット」「国家公務員の人員削減と人件費2割カット」などを打ち出す。「社会保障制度は抜本的に見直す」(松井一郎代表)と明言しており、社会保障給付はむしろ削減する方向だ。ただし、これら身を切る改革でどれだけの歳出がカットされ、新たな財源が確保されるかは示されていない。

ちぐはぐな面もある。維新の会は従来から年金制度改革として、現行の賦課方式から積み立て方式への移行を提示している。ただし、積み立て方式に移行しても少子高齢化の影響は現行方式と変わらないということが、多くの社会保障研究者らから指摘されている。さらに、積み立て方式に移行すると、税や保険料の負担が増えることが確実視されている。

積み立て方式への移行を主張するのは維新の会だけだが、同党がそれを売りにしたいのなら、負担額や財源手当てなど金額を含めた具体的な移行プランを示すべきだろう。

れいわは「消費税廃止」「奨学金チャラ」を主張

野党の公約の中で、もっとも過激なのはれいわ新選組だ。同党の公約には「消費税廃止」「奨学金チャラ」「最低賃金1500円を政府補償」「保育、介護、障害者介助、事故原発作業員などを公務員化」「一次産業戸別所得補償」などの文言が躍る。

その一方で、財源については「新規国債の発行」を挙げる。「財政出動を行い、生活を支え積極的に経済をまわします。経済成長すれば当然、税収は増えます」とし、「インフレ目標2%に到達後、金融引き締めで増税まで必要な場合には、税の基本(応能負担)に還ります」と言う。

これは最近、ネットを中心にはやるMMT(現代貨幣理論、政府は財政赤字や借金を一切気にする必要がないという理論)にのっとったもので、これを支持する京都大学大学院の藤井聡教授は、参院選直前に米国のMMT提唱者を日本に招聘して記者会見を開くなど、援護射撃も活発だ。

他の野党と同様に、れいわも、公約に必要な財源や国債発行で賄った場合の財政見通しを示すべきだろう。「借金しても大丈夫」と言うなら、議論の叩き台となる数字が必要だ。れいわのような過激な野党の登場は、国民の閉塞感の裏返しではあるものの、現在のような選挙公約がまかり通るなら、結局かつての無責任野党と変わらず、最後は深い失望に終わることになるに違いない。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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