500円ランチの効果は大きい。もう1品の「ついで買い」や、夜に来店するリピート客もつかんだ。その結果、「500円」という低価格を武器にしつつ、客単価も2%以上向上した。そのほかの月にも、水曜日限定で「9ピース(ニワトリ1羽分)1500円」、「ケンタッキーの全部盛り」など割安感を出したセットを投入し続けた。
二層戦略は、もちろん低価格のみではない。もう一方の季節商品でも手を緩めなかった。「ヘビーユーザーはワクワクする新商品を求めている」(中嶋氏)。
夏場の定番となったレッドホットチキンに加え、「スパイシーメキシカン」や「辛口ハニーチキン」といった期間限定商品を割安なメニューと併売することで、一度つかんだ客を飽きさせないようにした。
広告戦略を変えざるをえなかった事情
中嶋氏が切り込んだのは商品の見せ方だけではない。テレビCMなど広告の打ち方も一変させた。というより、変えざるをえなかった。
それまでは期間限定商品で来店を促す「一層戦略」だったこともあり、新商品を発売するタイミングで大量の広告を打っていた。しかし二層にしたことで、限られた予算で両方の魅力をアピールする必要が生じた。そこで中嶋氏がとったのは、1つひとつのキャンペーンの販売期間を長く取る戦略だ。
発売のタイミングで大量に投下するやり方から、販売期間中コンスタントに一定の量の広告を打つ形に改めた。「以前は『噂で聞いたあのチキンを食べたい』と思った頃に来店されて、もう終売していたことがあった」(中嶋氏)。
消費者にとって外食の選択肢が増える中、販売期間を長めに設定することで、売り上げの機会ロスを減らした。
別のファストフードチェーンの幹部は「ケンタッキーのCMを見る機会が本当に増えた」と警戒する。広告にかける予算を増やしていないのに、だ。
従来はテレビCM一辺倒だったが、現在はTwitterや、TikTok、YouTubeといったデジタルメディアにも広告を出す。当然、マスメディアよりも少ない費用で広告を打てるうえ、弱かった若年層へのアプローチもできる。あらゆるメディアに登場することで、どこかでケンタッキーを思い出してもらうことにつながった。
また従来型のテレビCMに関しても、「高畑充希さんを起用したのが非常にハマっている」と競合の外食チェーンからうらやむ声は多い。「今日、ケンタッキーにしない?」の奇をてらわないキャッチフレーズとともに、消費者に好印象を与えたようだ。
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