なぜ関西私鉄で「京阪」だけがプロ野球に無縁? グラウンド建設など実は野球とは深い関係

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折しもこの頃、大阪毎日新聞が中学野球大会(大阪朝日新聞が主催)に対抗して「選抜中等学校野球大会」(現在のいわゆる「春のセンバツ」、以下「選抜野球大会」)の開催を検討しており、京阪グラウンドをその会場とすることで両者は合意した。

ちなみに、大阪毎日新聞は京阪グラウンドの野球場建設に際して、設計などに協力している。拡大計画は当時の京阪社長自らが積極的に指示を出したと言われ、順調に進むかに思われた。

輸送力がネックに

だが、この計画に思わぬところから“待った”がかかった。ほかでもない、京阪の運輸部門である。

大阪と京都を結ぶ京阪は、現在も観光と通勤通学の両面で多くの乗客を運んでいる(筆者撮影)

選抜野球大会は毎年春に開催が計画されていたが、春といえば京阪は行楽シーズンの真っただ中。ただでさえ多くの乗客を運ばなければならないこの時期に、さらに野球観戦の観客を運ぶ余裕はなく、車両の増備をしない限り安全面で問題がある、との意見が噴出したのだ。

当時、京阪の列車は1両編成が主体で輸送力に乏しく、後年ではあるが1927年には2万人が詰めかけた野球の試合で、帰りの観客輸送に2時間以上を要したとの記録も残っている。輸送力増強は、グラウンド拡大の必須条件であった。

しかし、このころ京阪は新京阪線(現在の阪急京都線)の建設で多額の資金を必要としており、選抜野球大会に呼応した設備増強は難しかった。結局、京阪はグラウンドの拡大を断念し、選抜野球大会は名古屋で第1回を開催した後、第2回からは甲子園球場で行われることになったのである。

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