最低賃金「引き上げ反対論」が無知すぎて呆れる 「国際比較のワナ」「インフレ」の論理的な破綻
私の目には、日本は制度を改善させることは得意なようですが、制度そのものを抜本的に見直す改革は苦手なように映ります。
なぜ改革が苦手なのか。その理由は、やはり調査・検証・分析、そして論理的思考に慣れていないからだと思います。
少々長くなりますが、先ほど紹介したほかの筆者による生産性に関する記事の一部を抜粋します。
2019年6月26日公開「なぜ政府も野党も最低賃金を無理に上げるのか」より
では、検証していきましょう。専門的な問題点の前に、そもそも論理的思考になっていないところを紹介します。太字にした最終パラグラフです。
論理的思考を行うときには、まず仮説を立て、理屈を並べます。その後、その仮説を反証することができるかどうか、隠れている矛盾点や盲点がないかどうかを検証します。
大昔、人間が大草原に暮らしていた時代、猛獣に襲われて食べられてしまわないように、人間には条件反射で動くという本能が組み込まれました。その結果、論理的思考より思い付きのほうが人間の行動に影響を与えやすくなってしまいました。
そのため、同じ人間の頭の中でも、完全に矛盾している考え方をいくつも信じることができる仕組みになっているのです。この矛盾を解消するためには、頭の中に浮かんだ考えを「見える化」する必要があります。論理的思考、検証、分析は、そのためにあるのです。
「国際比較のワナ」には二重の勘違いがある
先ほどの抜粋で展開されている理屈は、一見するともっともらしく見えます。しかし、「国際比較のワナ」という理屈には、大きな論理的欠陥があります。結論に論理の飛躍があるのです。
「グローバルに活躍する企業が増えていく流れの中で、それと反比例するように国内の生産性が低下していく」ため、日本の実態は「国際ランキングに示されているほど悪くない」とあります。ここからは必然的に、「日本企業の海外での活動が、他国と比較して相対的に活発だ」という結論が導かれます。
当たり前ですが、日本だけがグローバルに活動しているわけではありません。ですから、この理屈が成立するためには、日本の海外投資がほかの先進国の投資より大きくなければいけません。しかし、証拠は示されていません。
論理的に思考するのであれば、この結論をデータで検証する必要があります。まずは、これまで海外に投資された金額のデータがあるかどうかを調査するべきです。
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