山本太郎に見える田中角栄との意外な共通点 「中島岳志×プチ鹿島」対談後編

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中島:そうなんですよ! やはり政治家よりもメディアでお仕事をされている鹿島さんのほうが、鋭く察知していますね。

ポピュリズムの本質は、イデオロギーではなくエリート批判です。エリートたちが牛耳っていることに対する、大衆側からの異議申し立ての思想です。右につくのか左につくのかの違いはありますが、2人が体現しているのはポピュリズムです。

鹿島:百田さんは、メディアが既得権益の集団だと批判しますが、同じように思っている人がいて、言葉の強さやチョイスはともかく、溜飲を下げる人たちがたくさんいる。山本さんを支持している人の既得権益のイメージは違うでしょうけど、似たような構造なのでしょう。

中島:でも政治は、そこに言葉を発してきませんでした。党首討論をテレビで見て、わかる人がどれだけいるのか。でも山本さんは「消費税を下げると物価が下がるから、実質賃金を上げるのと同じ」とわかりやすく説明する。

鹿島:百田さんは山本太郎さんに対して「選挙で絶対に落選させたい」とつぶやいています。敵対心を持つのは、百田さんのアンテナが鋭いからで、いちばん真逆にいるように見えて、似たものを持っているからこそ。警戒しているのは、評価しているからだと見ています。

中島:エリートの議員はたぶんピンと来ていない。山本さんに支持は集まらないだろうと思っているでしょう。どっちに大衆のリアリズムがあるのか。

山本太郎さんがこれから単なる道化師になるのか、あるいは田中角栄的なエートス(情念)をリベラルで使う側になるのか。今はその岐路でしょうね。野党はケンカをしている場合ではありません。大平正芳さんと田中角栄さんが両輪だったように、知的なタイプの政治家と大衆の情念をすくい上げる山本太郎さんが組めば、リベラルの1つの選択肢になれる可能性があると思っています。

政治は笑える?笑えない?

中島:最後に鹿島さんにお聞きしたいのですが、芸人として政治について触れ続けるのはなぜでしょうか。

鹿島:僕はどちらかというと保守的な人間で、急激に変えるよりは一日一日、少しずつ変わっていくほうにシンパシーを持ちます。「いまやっていることがおかしい」と言って、ツッコんだり茶化すのは、別に「反日」ではないですし、普通のことだと思います。でも、今は政治のことに触れてはいけない空気がなぜかある。

だって小学生の頃、大平さんのモノマネとかやっていましたもん。ふざけていても、モノマネにはどこか本質的なものがあるんですよ。僕も最近、二階俊博幹事長のモノマネをしています。

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中島:鹿島さんは二階さんがお好きで、コラムにもよく書かれていますよね。

鹿島:二階さん、いますごいですよね。狂い咲きです。「老後2000万円」の報告書を受け取らない理由が「選挙が近い」って、あんな言い方はない。あの口調の中のおかしみを指摘し、表現したい。そういう作業は芸人ならではだと思っていますね。

中島:サンドウィッチマン・伊達みきおさんの、安倍首相モノマネが僕は大好きで、あれは安倍さんの発言内容やイデオロギーを批判しているわけではない。あの口調をモノマネしているだけで、安倍さんがいかに何も言っていないのかがわかってしまう。ああいうものを笑うのは、大衆的な健全さですよね。

鹿島:僕は芸人なので、強い言葉で罵倒するよりも、言われた本人ですら苦笑いしてしまうツッコミが好みだし、理想です。民主党政権時代も鳩山(由紀夫)さんや菅(直人)さんをさんざんネタにしてきました。その点では、自分の中でブレていないと思います。僕の中では、面白い「素材」があるのに黙っているほうがありえない。政権が変わっても、ネタにしたり茶化し続けると思いますね。

(構成:山本 ぽてと)

中島 岳志 東京工業大学教授

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なかじま たけし / Takeshi Nakajima

1975年大阪府生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『ナショナリズムと宗教』『インドの時代』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『親鸞と日本主義』『超国家主義』他。

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プチ鹿島 芸人

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ぷちかしま / Puchi Kashima

時事ネタと新聞読み比べ(12紙購読中)を得意とする芸風で、現在ラジオ・テレビに多数レギュラー出演中。

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