山本太郎に見える田中角栄との意外な共通点

「中島岳志×プチ鹿島」対談後編

中島:野田さんの興味深いところは、彼女自身の人生と政治的な選択が両輪で進んでいるところです。彼女は私生活で事実婚をし、子どもを望んだけれどできなかった。その後、別のパートナーの方と代理母によって子どもを授かり、障害のある子が生まれた。

中島岳志(なかじま たけし)/1975年大阪府生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『ナショナリズムと宗教』『インドの時代』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『親鸞と日本主義』『保守と立憲』『超国家主義』『保守と大東亜戦争』ほか(撮影:梅谷秀司)

彼女の政策も、そんな人生経験から生まれています。事実婚をめぐる夫婦別姓の議論、障害のある子どもの問題、自分の人生とぶつかってきたことが政策になっていき、人口政策や再配分といった論点を深めていく。

こういう政治家は信用できると僕は思っています。いざというときに、弱者を切らない。自分のやっていることが、わが子を傷つけるのだというリアリティーは、人間としていちばん信用に足るものでしょう。どうも、今の政治家はそういうモチベーションが見えにくい人が多い。

鹿島:小渕さんの章も興味深く読みました。政治資金問題があったり、小渕恵三さんの娘であることを利用していると烙印を押されがちだったりする人ですが、出産を経験し、さらにおじさんの政治家の無理解と理不尽の中で戦ってきた。その歴史を読むと、今の時代に向いている政治家になってきたのではないか。

中島:彼女は共働きなので、自分の子を保育園に行かせて、そこから国会に行って、選挙をやって……と働き続けてきた。その中で、お母さんの声をどう反映したらいいのか、という問題意識が生まれてきたようです。それも非常に信頼に足る感覚ですよね。

「保守本流」の中心にいた小渕恵三

鹿島:小渕さんのお父さんはもちろん小渕恵三さんで、小渕派、その前は竹下派です。自民党の大きな流れを見ると、田中角栄以降の再配分を進めていく「保守本流」ですよね。自民党支持者の中でも、いまの安倍さんが本当に保守なのかと疑問に感じている人がいるかもしれない。

保守本流を打ち出そうと思ったときに、小渕優子さんはその切り札を身体の中に持っている方なのかもしれないと思いました。

中島:小渕さんはお父さんのことが大好きで、お父さんが貼ってくれたばんそうこうがはがれた後も、宝箱に入れていたというエピソードがある。彼女はもともとテレビ局でADをしていたのですが、官邸に行くとお父さんがマッサージ椅子の上で、ネクタイをしたまま寝ている。その姿を見て仕事を辞め、父の秘書になった。

しかしイギリス留学のため海外滞在を始めた矢先に、恵三は倒れてしまった。その背景には当時の小沢一郎率いる「自由党」とのややこしい関係があり、気苦労が絶えなかった。だから小渕優子さんは、小沢一郎さんに対して非常に手厳しい発言が多い。

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