山本太郎に見える田中角栄との意外な共通点 「中島岳志×プチ鹿島」対談後編
鹿島:僕はこんな妄想をしています。もし自民党が選挙で数を多く減らしたとして、でも政権を取りたいと思ったときに、過去に村山富市さんを担いだように、玉木さんを担ぐんじゃないか……!
中島:ありうると思います。彼は小泉進次郎さんと石破茂さんにはエールを送っていますから。新自由主義的な部分で彼らは近い。玉木さんがその路線でいくならば、枝野さんからは遠ざかっていきます。僕としては、自民党がⅣで固まっているなら、Ⅱのゾーンを固めてほしいと思います。
鹿島:野党でいうと、ここ数週間(この対談は2019年6月24日に行われました)で目にするのは、れいわ新選組の山本太郎さんの話です。中島さんも、今までの野党に足りなかったものを持っていると評価していましたね。
中島:枝野現象との同一性と差異を感じています。枝野さんも山本太郎さんも、みんなが選択肢を失ったとき、選択肢を作ろうと1人で立ち上がった。枝野さんの場合はⅡのゾーンである野党の、山本さんの場合は消費税増税反対の選択肢です。
でも枝野さんがつかめなかった若年層と保守層を、山本太郎さんがつかんでいると思います。Ⅱのゾーンに、田中角栄らしき人がようやく現れたと思っているんです。彼は高校中退で、エリートではない。役者になってからは荒くれものだけれども優しい役が多かった。祭りのみこしを担いでいるような、地方の共同体を支える人たちと、ものすごく体質が合うと思うんです。
鹿島:ああ、枝野&山本太郎が組めば現代の大平&角栄になりうるのですね。山本太郎さんは熱を発生させてますね。自分の政策を反映するためには大臣も引き受けると発言したり、したたかにもなっていたりする。成長していますよね。
中島:彼自身も一つひとつ勉強しているんですよね。演説では「なんでも質問してください」と言うのですが、わからないときには「わからないので詳しい人はいますか?」と聞く。これは40代から50代の男がいちばん苦手なことです。わからないけど、教えてくださいって、政治家はなかなか言えなかった。
鹿島:でも、山本太郎さんは言える。
中島:そういうときって、必ずしも明晰な答えを質問者が求めているとは限らない。ただ聞いてほしいだけかもしれない。山本さんはそれがよくわかっている人ですよね。
百田尚樹と山本太郎の共通点
鹿島:『ニューズウィーク日本版』(2019年5月28日発売)で、ノンフィクションライターの石戸諭さんが「百田尚樹現象」について取り上げていました。あれを読むと、百田さんはごく普通の人の感情を忘れない人であることがわかります。意外に思う人もいるかもしれませんが、今SNSで「普通の日本人です」と名乗る人ほど、言葉が強かったりしますし、中国や韓国への嫌悪を出しているでしょう。
彼らはそれを思想的ではなく「普通」だと自負している。そういうカギカッコ付きの「普通の人」をすくい取ったのが百田さんなんでしょう。今、「普通の人」は普通じゃないのでは?という論点を、特集記事の筆者である石戸諭さんは書いた。
その一方で、真逆の極みにあるのが山本太郎現象だとも思います。まったく違うように見えて、同じポピュリズムですよね。