山本太郎に見える田中角栄との意外な共通点

「中島岳志×プチ鹿島」対談後編

中島:単にマニフェストを掲げ、そのとおりにやるのであれば、究極の官僚制になる。ですが、政治は人間がやるものです。保守思想は、人間は不完全だから間違えていることを念頭に置き、ほかの人の言い分を聞こうとします。そうやって合意形成をするのが保守政治です。でもそれは、今の自民党からは失われている態度ですよね。

鹿島:打ち出したマニフェストを達成するのも大事ですが、国会で論議を重ね、ほかの政党のほうがいいと思うのであれば、政策を変えてもいいし、その様子を可視化してほしい。それが国民の代表の役割で、政治家の議論だと思います。

中島:自分の言っていることよりも、相手の言っていることのほうが正しいと思えば、意見を変える勇気のある人だけが議論をできます。ただの言い合いは「議論」ではない。

鹿島:安倍さんの言う「論破」ですよね。

中島:大平正芳さんは「政治は60点」と言っています。60点で妥協しているのではなく、60点じゃないとダメだというんです。100点を取るのは自分が正解を所有している感覚を持っている。60点じゃないと、相手に40点くらい言い分があると思わないといけない。

鹿島:論破には、とどめを刺してぐうの音も出させないニュアンスがありますが、それだと政治の議論としてはダメですよね。相手の言い分も聞いて60点を取る。

中島:大平さんは「アーウー」と前置きをして話すことで有名でしたが、彼は「アーウー」を除けば見事な文章をしゃべっている人なんです。きっと「アーウー」でいろんなことを考慮してきたのでしょう。対して、今の首相は「論破」ですからね。

玉木雄一郎、枝野幸男、そして山本太郎

鹿島:ウェブメディアの『論座』(朝日新聞社)で「中島岳志の『野党を読む』」が続いていますよね。玉木雄一郎さんが大平さんから非常に影響を受けていることを知りました。今、野党の中に、枝野さんも玉木さんもいます。

中島:安倍さんが自民党総裁になって衆議院選挙を3回行っていますから安倍さんが公認した候補がベテランになっていくと、ますますⅣのゾーンに集中していくでしょう。そう考えると、野党はⅡの部分を取りにいくしかない。

玉木さんは、ⅡとⅢの間の人です。彼も東大出身の大蔵官僚なので自己責任論が根深くある。基本的には小さな政府を志向し、行革が必要だと考えている。彼が民主党政権の事業仕分けで活躍したことにもつながります。

一方で、彼は大平さんと同郷の香川県出身で、苦しい農家の現状を知っている。香川の高松市沖に浮かぶ大島にあるハンセン病療養施設もたびたび訪ね、入所者の声に耳を傾けてきました。自己責任論を進めるとこの人たちが苦しむことも、玉木さんはよく知っている。「リスクの個人化か?」「社会化か?」の両方に引き裂かれながら、バランスを取ってきた人なんです。

もし立憲民主党の枝野さんと組む選択をするならばⅡのゾーンに、自民党の石破さんと組むのであればⅢのゾーンに行くでしょう。これによって野党のあり方が変わってしまうかもしれない。

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