避難指示が出ても逃げ遅れてしまう人の心理 豪雨災害から身を守るために必要な4指針

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砂防堰堤などの防災インフラが整備されているがゆえに、避難情報が発令されていても避難せずに、土砂災害の被害に遭った方もいた。たしかに砂防設備があれば、ほとんどの土石流は食い止められる。

倉敷市真備町地区を流れる末政川の堤防が決壊した地点。取材した2018年12月時点では、まだ補修工事の最中だった(筆者提供)

だが、100%防ぎ切れるとは断言できない。広島市安芸区矢野東の梅河団地では、災害の5カ月前、2018年2月に完成したばかりの治山堰堤を越えて土石流が団地に流れ込み、5人の住民が犠牲となった。

「災害心理の観点からすると、人はなかなか動こうとしない動物である」。災害心理学を専門とする広瀬弘忠さんのこの言葉は、被災地で見聞きしたことと符合する。

いつ、どこに避難するか事前にルール決めを

人間は、自分の身に危険が迫っていても、正常性バイアスなどによってすぐにはそれを実感できず、逃げ遅れてしまう。そんな性質を抱えながら、われわれはどうすれば適切に避難行動を起こせるようになるのか。私が可能性を感じたのは、防災科学技術研究所の三隅良平さんが示してくれた「4つの指針」である。

 【1】自分が暮らす地域の過去の災害歴や地理的な特徴を知る。
 【2】避難行動を起こす自分なりのルール、避難方法をあらかじめ決めておく。
 【3】大雨や台風のときには、自分から情報を取りにいく。
 【4】あらかじめ決めたルール・方法に基づき、避難行動を起こす。

【1】の地理的な特徴の把握には、自治体が公開しているハザードマップを確認しておくことが、1つの方法となる。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」 では、全国のハザードマップなどを閲覧できる。

【2】では、【1】で得た知識に基づいて、いざというときの判断・行動の基準を決める。一口に避難といっても、住んでいる場所や住宅の状況によって、その方法やタイミングは異なる。川のそばに住んでいるのであれば、氾濫時に家ごと流されてしまうかもしれないので、氾濫の危険が少しでもあれば、すぐに自宅を離れなければならない。

一方、河川から離れた場所で、ハザードマップの想定浸水深があまり深くない場合は、大雨の中で無理に家を出て避難所に向かうよりも、自宅の上階に避難したほうが安全だったりする。

自宅を離れて避難する場合、「どこに、どういうルートで避難するか」も決めておく。というのも、指定避難所の中には浸水エリア内や土砂災害警戒区域内に位置しており、豪雨災害時に避難所として機能しない場所もあるからだ。

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