住商が「フィリピンバナナ」から撤退したわけ 労組が労働条件改善求めてスト、殺傷事件も

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労組側は、スミフル・フィリピンと労働者の間に雇用関係があると主張。しかしスミフル・フィリピン側は、スミフルの業務委託先と労働者の間に雇用関係はあるが、スミフル・フィリピンと労働者の間に雇用関係はないと主張。両者の主張は真っ向から対立していた。

だが、2017年6月にフィリピンの最高裁判所がスミフル・フィリピンと労働者らの間に直接の雇用関係があると認定した。これを受け、労組はスミフル側に正社員化や労働環境の改善などを要求。スミフルに対して団体交渉に応じるよう求めたところ、スミフル側が拒否。労組は2018年10月からストライキに突入した。

射殺や自宅銃撃、放火の被害も起きている

このストライキが始まった後、組合員を狙った複数の銃撃事件が発生した。2018年10月31日には組合員の1人が射殺される事件が発生した。来日したポール委員長も被害者の1人で、自宅が銃撃されたり、放火されたりしたという。

労働組合「ナマスファ」のポール委員長(左)は、スミフルに出資する住友商事に対し、労働問題の解決へ向けて努力するよう要求している(記者撮影)

確かにフィリピンの治安情勢はよいと言える状況にはない。特にミンダナオ島では武装勢力に対応するため2017年5月に戒厳令が発令され、再三延長されていまだに解除されていない。労組が2018年10月に行ったストライキでは軍や警察が介入し、組合員が負傷する事態にもなった。

銃撃や放火などの実行犯は特定されていないが、ポール委員長は「銃撃や放火などの事件はストライキ後に起きており、労組の活動の妨害が意図されている」と主張。スミフルに出資する住友商事に対しても、問題解決に尽力するよう要求した。

しかし、住商はスミフル株を売却することを決めた。「株式の売却は労組の要求から逃れるためではないか」との東洋経済の質問に対し、住商は「スミフル株売却と労働問題の間に関係はない」と明言する。撤退発表日にポール委員長らが会見したのも、単なる偶然であるという。

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