参院選は政治家のイメージだけでなく顔も見よ 中島岳志とプチ鹿島が徹底的に語り合った
中島:菅さんは「値下げおじさん」なんです。アクアラインの値下げをはじめとして、さまざまな値下げを行ってきた、ポピュリストなんです。
鹿島:かといって、田中角栄元首相のような庶民的な人気につながるわけではなく、どこかに冷たさがある。
中島:こうした菅さんの性格を考えると、もし首相になったらどんな政策をするのか――。
鹿島:重要なお話なので、ぜひお伺いしたい!
中島:たぶん、消費税値下げをすると思います。値下げおじさんですから。菅さんは今の消費税増税にも積極的ではありません。
鹿島:政局の面から穿(うが)った見方をするなら、「安倍さんのうちに上げちゃってほしい」と思っているんじゃないか。
菅さんと麻生さんは対立していると言われていますけど、増税したい麻生さんを黙認して、衆院解散はせずにこのまま内閣をやろうと腹をくくった。もっと言えば、この内閣で面倒なことはやっといてほしいと思っているんじゃないかな。
中島:そのあたりは、菅さんはうまいと思います。彼は読売新聞の人生相談を毎日読んでいて、庶民感覚を注意深く見ている人です。最近は、どうも政治全般が広告的になっていますよね。イメージ戦略によってすべてを動かそうとしている。
鹿島:吉本新喜劇に安倍さんが出たり、芸能人を官邸に招いたりするのも似たような広告的な方法です。最近(この対談は2019年6月24日に行われた)、芸人の「裏営業」が話題ですが、政治家が政策の結果によって支持率を上げるのが正規の営業だとしたら、「タレントと会いました」「令和おじさんですよ」とふわっと好感度を上げるのは、私から見ると「裏営業」だと言いたいです。
最近、自民党は裏営業ばっかりやっていませんかね。委員会も開かずに、年金の報告書も受け取らずに。裏営業も必要かもしれませんけど、それだけに偏ってないですか? とすごく思うんです。
今こそ「床屋政談」を!
中島:鹿島さんは、タブロイド紙やスポーツ紙から情報を集めていますよね。実は小泉内閣のとき、飯島勲秘書官は、全国紙よりもタブロイド紙に注目していたと言います。小泉さんはふだん選挙に行かない無党派層の票を取ろうとしていたからでしょう。
鹿島:会社帰りの電車の中で、おじさんが欲望をたたきつけるのがタブロイド紙で、1、2面では政治に対して怒っていても、数枚めくれば風俗情報がある。そこをバカにする人もいますが、全部含めて人間です。中には、重要な記事も含まれています。
中島:そこを侮ってはいけませんよね。政治はエリート的な言葉が中心に進んでいきますが、党首討論を聞いていても大多数の人は意味がわからないと思います。大衆的な言葉と政治とをどのようにつなげていくのか、タブロイド紙は重要な役割があると思うんです。
鹿島:僕は今こそ「床屋政談」が必要だと思っています。だいたいの人たちは政治のニュースを毎日追いかけているわけではないですが、八百屋さんなら八百屋さんの、魚屋さんなら魚屋さんの、サラリーマンならサラリーマンの、それぞれの現場で額に汗して働いて、人間の判断力を培っている。そういった人たちが、床屋さんに集まって人物の品評会をするのはバカにできないと思います。