参院選は政治家のイメージだけでなく顔も見よ 中島岳志とプチ鹿島が徹底的に語り合った

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鹿島:政策を見たうえで、政局を見るとより面白いですよね。同じ政策でも、この政治家がどれだけの熱量を持って行っているのかが、政局を見ないとわかりません。政治は人間が選んで、人間がやるものだからです。

プチ鹿島(プチカシマ)/1970年、長野県生まれ。新聞12紙を購読。時事問題を絡めたネタを得意とし、テレビ朝日『サンデーステーション』、BSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』にレギュラー出演のほか、新聞、雑誌などにコラムを寄稿。著書に『芸人式新聞の読み方』など(撮影:梅谷秀司)

中島さんが幼い頃、おばあさんに「誰に投票したのか」と聞くと「男前」と答えたという話があるそうですね。イケメンというわけではなく、信用のできる顔つきということですよね。この人はどれくらいの器なのか、胆力はどれくらいなのか。ちょっと前まで、例えば僕らの親の世代は、そこを見ていた気がするんです。

石破さんは著作をたくさん出されているし、政策的な発信をされているので、ポスト安倍、もしくは安倍さんの対抗馬として出てくる必然性がありますね。

でも実際に安倍さんと対等に、もしくは主流派を相手に回しても自分はやりぬく胆力の面でみると、大事なところでヘナヘナっとしてしまう部分が彼にはあると僕たちは知っている。

中島:おっしゃる通りで、政策的なマニフェストだけでいいのであれば、政治家は必要ありません。AIがやればいい。でも人間がさまざまな調整をしながら政治をしていく。この人がどのようなビジョンを持っているのか、そしてどのような人格なのかの両面から人間判断するのが政治だと思っています。

ただの本音が「失言」になっている?

鹿島:昔の自民党って、もっと自民党総裁選でガス抜きをしていたし、多様性があったと思うんです。

例えば1998年の自民党総裁選では、小渕恵三さん、梶山静六さん、小泉純一郎さんが出て、それを田中真紀子さんが「凡人・軍人・変人」と言って盛り上がりましたね。みんなが夢中で見ていて、でも結局は自民党の興行をずっと見ていたことに気づかされたわけです。したたかで狡猾だなぁという感じがあった。

今回の総裁選でも、安倍さんに対して、野田聖子さんのように対極にいる人を候補に立てて論戦していれば、もっと盛り上がったでしょう。自民党は懐の深い政党だなと国民も感じるだろうし、党内のガス抜きもできたと思います。

でも実際は「野田さんをいかに出馬させないのか」という動きが目立った。「首相と逆の考えを持つ人は総裁選すら出られないのか」と、野田さんと近い考え方を持つ人たちのガスもたまっていきますし、国民の目にも多様性のない政党に見えた。

中島:おっしゃる通りです。野田聖子さんを出していたら、自民党の多様性が見えたと思います。彼女は、選択的夫婦別姓に賛成していますし、人口政策の重要性や再配分を主張してきた。彼女を出したらいい論戦になったと思うんです。でも今の自民党は論戦を消そうとする。

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