ナベプロと吉本「闇営業対策」で明暗分けた大差 ザブングルは徹底した危機管理に助けられた

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その宣言には、「現在の吉本興業においては、あらゆる反社会的勢力との関係は一切有しておらず、今後も一切の関わりをもたないことを固く誓約・宣言いたします」「約6000人の所属タレント及び約1000人の社員のあらゆる行いについてはすべて当社の責任です」と書かれていたように、内容として責められるところはありませんでした。

しかし、今回の騒動に対する具体的な対応がまたも書かれていなかったことで、世間の人々は「騒動を過去のことにして、話を今後のことにすり替えられた」と感じ、むしろ吉本興業への不信感を募らせていったのです。

6月28日、吉本興業ホールディングスの大崎洋会長が共同通信のインタビューに答え、「(会社を)非上場とし、反社会勢力の人たちには出て行ってもらった。関わった役員や先輩も追い出し、この10年やってきたつもり」と話しつつ、「本当に申し訳なく思うし、個人的にはじくじたる思いもある」と謝罪しました。

トップがコメントすることは、「企業の姿勢を見せる」という意味で重要なものですが、その内容が「ほとんど意味をなさなかった」というケースは少なくありません。現在、世間の人々が吉本興業に求めているのは、「企業の姿勢を見せる」ことではなく、ナベプロが見せたような「騒動の具体的な内容を明らかにし、謝罪先を明確にする」こと。「企業の姿勢を見せる」前にすべきことをしていないから、イメージは回復せず下がり続けているのです。

吉本興業が今からでもすべきこと

つまり、現在の明暗を分けたのは、ナベプロが世間や被害者に向けた対応をしているのに対して、吉本興業は自社や取引先に向けた対応をしているから。ナベプロがイメージ回復どころかプラスの効果を生んでいることを見れば、今回のような「ピンチはチャンス」であることは明らかです。

例えば、今日これからでも「遅すぎる」ことはありません。吉本興業はナベプロのコメントを踏襲してでも、受領金額、所得の申告、被害者への対応、今後の取り組みなどを明らかにすることで、信頼回復の第一歩につなげたほうがいいのではないでしょうか。

また、ここまで対応が後手に回ってしまった以上、誰もが「本人同席による会見が望ましい」と感じているだけに、書面でのコメントは避けたいところ。吉本興業には日本中の人々を楽しませられるタレントが多いだけに、マネジメントの責任は重大であり、今後の対応にも多くの注目を集めるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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