北海道新幹線「牧草地帯」の新駅は何を狙うか 2031年春「札幌延伸開業」の活路はどこに

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八雲町の住民は2019年5月現在、1万6422人で、人口1万人に満たない町が多い道南地方では函館市、北斗市、七飯町に次いで4番目だ。面積は道南18市町で最大という。

現在の八雲町は2005年、噴火湾に面した山越郡八雲町と、日本海側に面した爾志(にし)郡熊石町が新設合併して誕生した。このとき、郡名を「二海(ふたみ)郡」に改めた。

噴火湾パノラマパークから見渡した町中心部と噴火湾=2019年5月(筆者撮影)

町のキャッチフレーズは「日本で唯一、二つの海を持つ町」だ。木彫り熊やバター飴の「発祥の地」をうたう。さらに近年、「2030 北海道新幹線新八雲駅(仮称)開業」の文字がパンフレットに加わった。

町のホームページは、新幹線車両も加えたおしゃれなイラストをあしらい、人口規模や立地を考えるとあか抜けた印象だ。地域おこし協力隊のFacebookページや職員ブログを開設、多様な情報発信に力を注ぐ。

町の「ペコちゃん伝説」

八雲町は道南で最も酪農が盛んなまちだ。町役場によると2017年度の時点で、乳牛9997頭、肉牛2163頭、合わせて1万2000頭余りと、町民数に迫る牛が飼われている。

そして、「牧場の町」らしい、風変わりな“伝説”がある。お菓子などの製造・販売を手がける不二家(本社・東京)のイメージマスコット「ペコちゃん」のモデルは、八雲町内にあった「あすなろ牧場」の一人娘だったというのだ。

国道5号と噴火湾パノラマパークを結ぶシラカバの並木道=2019年5月(筆者撮影)

町観光協会のパンフレットは、2ページを割いて、この「ペコちゃん伝説」を紹介している。ちょうど「ペコちゃん」がデビューした1950年代、八雲町の農業は酪農へ大きくシフトし、他地域に先駆けて近代的な酪農が導入されていた。不二家の社員が視察に八雲町を訪れ、牧場の一人娘にイメージを得たのかもしれない――。言葉を選びながら、パンフレットは記す。

町役場が調べたが、「あすなろ牧場」の存在は確認できなかったという。それでも、八雲町内には不二家の店舗があり、ちょっとした縁を感じさせる。また、不二家の人気商品「ミルキー」には、八雲町の牛乳が使われており、いわば「ミルキーは八雲の味」なのだという。

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