北海道新幹線「牧草地帯」の新駅は何を狙うか 2031年春「札幌延伸開業」の活路はどこに

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道路脇の笹やぶに、新幹線を建設する鉄道・運輸機構が立てた「中心線表示杭」が隠れていた。

金属製で、積雪を考慮したのか、高さ1mほどもある。他地域の同様の木製杭より大きく「新青森起点202km900m」「東京起点877km800m」「新函館(仮称)まで54km」「札幌まで157km」と情報量も多い。

新八雲駅の建設予定地近くに立つ中心線表示杭。本州のものより大きく頑丈だ=2019年5月(筆者撮影)

この表示杭を除くと、新八雲駅の建設予定地であることを示すのは、道道42号沿いの牧場近くに立つ大きな看板だけだ。かわいらしい牛のイラストの向こうに、本物の牛が数頭、昼寝している。

「牧場の中にある駅」をうたった駅周辺整備基本計画は2019年3月にまとまったばかり。これから徐々に、駅や周辺施設の完成予想図などが掲示されるのだろうか。

整備新幹線の沿線で「駅前に何もない」と評される駅はいくつもある。それでも、在来線の駅や幹線道路、郊外型店舗などが近隣にある例がほとんどだ。ここまで人工物や都市機能と縁遠い駅は記憶にない。ただ、建設予定地に隣接して、新しい住宅が1軒建っていた。この家に住む人は、これから始まる建設工事を見守り、12年後の開業を見届けるのだろうか。

「牧場が近い」というロケーションは、青森県の東北新幹線・七戸十和田駅を思い起こさせる。牛と馬の違いはあるものの、近隣に北海道的な風景が広がる牧場や牧草地が散在し、町内ではサラブレッドの姿を見ることができる。札幌開業後は、これらの「牧場のある駅」を訪ねるツアーを組めるかもしれない。

全区間の8割はトンネル

北海道新幹線・新函館北斗―札幌間は、8割を占めるトンネルの掘削が先に進み、沿線で「工事現場」を目にできる場所はほとんどない。鉄道・運輸機構の資料によれば、2019年6月1日現在の掘削率は18.1%だ。

新八雲駅建設予定地から見た立岩トンネル入り口=2019年5月(筆者撮影)

中でも、新函館北斗―新八雲間54.1kmは、長さ32.7kmの渡島トンネルを筆頭に二股、磐石、祭礼、野田追とトンネルが続き、9割近くをトンネルが占める。新函館北斗駅を出た列車は、すぐに渡島トンネルに入り、ほとんど景観を眺めるいとまもなく、新八雲駅に到着。発車して間もなく、北側の立岩トンネルに入って札幌を目指す。

なお、地元紙によると、掘り出された残土のうち、重金属を含む「要対策土」の置き場が足りなくなり、確保が課題となっているという。トンネルの残土の行き場は、リニア中央新幹線の南アルプスの工事現場でも問題化している(2019年5月23日付記事「リニア開業『8年後』、長野・飯田の歓迎と戸惑い」参照)。

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