収益か投資家保護か「不動産情報サイト」の憂鬱 不正業者の締め出しにあの手この手

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個別企業だけでなく、業界団体も悪質業者の締め出しに乗り出す。不動産広告に関しては、不動産公正取引協議会という団体が規制を行っている。

主な対象は居住用の物件ではあるが、投資用についても、実際には存在しないのに集客のため広告掲載しているおとり物件の排除や、悪質業者に関する情報共有などを進める。ただ、利回りに影響する賃料設定については、「根拠さえあれば業者の想定どおりに出しても問題はない」(首都圏不動産公正取引協議会)ため、すべての不正を防げるわけではない。

不正業者がはびこる現状は、国も課題として認識している。国土交通省が今年4月に発表した「不動産業ビジョン2030」では、「不動産業者においては、法令遵守はもとより、コンプライアンスの徹底等を図るとともに、顧客の視点に立った業務の透明化や接遇意識の向上に努めることが求められる」とされている。

個人投資家のリテラシーこそ大事

他方で、報告書はこうも述べている。「個人投資家が適切な投資判断を行えるようにするためには、不動産投資リテラシーを身につけられる環境を整備することが重要である」。サラリーマン層にまで広がりを見せる不動産投資だが、一部では投資に関して十分な知識を身につけないまま、業者のカモにされてしまう投資家も少なくない。

今年2月、大手不動産会社が連名で異例の一面広告を展開。業界にはそれだけ危機感が募る(引用:日本経済新聞)

不動産情報サイトで大手の「健美家(けんびや)」は、この数年でユーザー数が約10倍にまで膨らんだ。その一方で、投資初心者が多数流入することに対して懸念も抱く。

同サイトを運営する健美家の倉内敬一社長は、「知識が不足したまま不動産投資をすれば、一部の悪徳不動産会社が提示する売り文句に引っかかってしまう。われわれとしてもそうした人々への啓発を行いたいが、そういう人ほどわれわれが発信するニュースやコラムを読んでくれない」と話す。

情報の非対称性が如実に表れる不動産投資。サイト側が対策を施せば、それをすり抜ける業者が現れるいたちごっこが続く中、今後は投資家側のリテラシー向上が1つのカギとなる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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