丸井今井の経営破綻、北海道老舗百貨店再建へ伊勢丹の支援策が焦点
伊勢丹は支援に乗り出すのか--。民事再生法の適用申請を行った北海道の大手百貨店・丸井今井の行方に注目が集まっている。
1872年創業の同社は、道内に4店舗を構える随一の老舗。だが、札幌駅前の商業施設などとの競合に加え、昨秋以降の売り上げ急減により資金繰りが一気に悪化。昨年12月末時点で約5億円の債務超過に陥っていた。1月29日に裁判所から再生手続き開始の決定を受けると同時に、業務提携関係にあった伊勢丹にスポンサー支援を要請した。
同社は、1990年代から2度の経営危機に陥り、そのたびに私的整理で切り抜けてきた。2005年には、地元金融機関や伊勢丹などの支援で再建に着手。伊勢丹からは、約5億円の出資(保有株の13%)や役員派遣とともに、店舗改装など営業面でのノウハウ提供を受け、800億円台前半にまで落ちた売上高を、5年間で900億円にまで引き上げる計画を立てていた。
が、結果として「伊勢丹主導の改革は失敗だった」(地元金融機関幹部)。高級路線を意識した品ぞろえは地元ニーズとかけ離れていたうえ「伊勢丹の営業手法はレベルが高すぎて丸井今井の社員はついていけなかった」(同)。
取引業者は困惑
丸井今井の取引先からは「伊勢丹は早く支援を決めてほしい」(アパレル業者)との声が相次ぐ。だが今のところ、伊勢丹の親会社である三越伊勢丹ホールディングスは「(回答を)長引かせるのは確かによくないが、そんなに早くは決まらない」(首脳)と、業務提携による営業支援以上の方針は出していない。
伊勢丹側にも事情がある。自社の売り上げも振るわないうえ、今は三越という“扶養家族”を抱えており余裕はない。「行政が失業者対策などといった『土産』をつけるかどうかも伊勢丹の検討材料になる」(地元金融幹部)。
とはいえ、丸井今井の旗艦店と三越の札幌店は同じ大通地区の目と鼻の先。「丸井今井・三越連合」の2館体制を組まなければ、札幌駅前とは戦えないとの見方もある。「丸井今井を見捨てれば、三越も苦しくなる」(取引先)。
2月2日の債権者説明会に出席したある取引業者は「伊勢丹が支援してくれないなら商品納入などとてもできない」と厳しい意見を口にする。再生計画案の作成には、伊勢丹の支援が不可欠だ。
ただ、大手アパレル幹部は「営業が続く以上、丸井今井には粛々と商品は納める。それよりも、消費者の百貨店離れを食い止めたいという思いのほうが強い」と語る。
ついに百貨店破綻を引き起こした地方不況の波。店の存続をかけた正念場は続く。
(福井 純、松崎泰弘 =週刊東洋経済)
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