新生・渋谷パルコ「ファッション再強化」の賭け ラグジュアリーからロリータ系まで広く誘致

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渋谷パルコは1973年の開業後、最先端だったDCブランドなどを集め、駅から少し離れた坂の上の立地にありながら、感度の高い若者がこぞって訪れるスポットだった。パルコに続く公園通りには若者が多数集まり、周辺の神南地区に大手セレクトショップが路面店を続々と出店。渋谷パルコの存在は、渋谷エリアが若者ファッションの流行発信地になるうえで大きな役割を果たした。

新しい渋谷パルコは地下3階、地上19階の高層ビルで、8階には演劇専門のパルコ劇場が入る(写真:パルコ)

「今はファッション好きが満足できるリアルな場所がなくなった」。牧山社長は新生・渋谷パルコでファッションを前面に押し出した理由について、こう話す。渋谷パルコはパルコのイメージを象徴してきた代表的な店舗。それだけに、同店舗でファッションへのこだわりを貫くことにより、ブランド戦略においてほかの商業施設との差別化を図る狙いだ。

逆張りで「ファッション強化」を掲げた渋谷パルコに、多くのアパレル関係者が期待を寄せる。ただ、思惑通りの結果が出るかどうかは不透明だ。足元では、慢性的なアパレル不況やネット通販の拡大が続く。インスタグラムなどSNSの浸透で情報収集の手段が多様化し、かつての渋谷パルコのように、トレンドをつかむために特定の店舗を訪れるといった消費者の行動パターンも少なくなっている。

再開発で人の流れは渋谷駅周辺に滞留?

このような状況下、ここ数年は「コト消費」に重点を置いた体験型のサービスや飲食フロアを拡充し、「脱・ファッション」に動く商業施設が後を絶たない。例えば、丸井は2015年に、ファッションが売り場の大半を占めていた「旧マルイシティ渋谷」を「渋谷モディ」にリニューアル。書籍などを販売するHMV&BOOKSやカラオケショップを目玉テナントとして誘致した。

「素敵なカップルが最後に渋谷パルコにたどりつくようにしたい」とパルコの牧山浩三社長は意気込む(記者撮影)

1990年代に女子高校生らの圧倒的支持を集めた「SHIBUYA109」も、カジュアル化やショールーミング化(リアル店舗で現物を確かめて、オンラインショップで購入すること)の影響で、2008年度をピークに売上高が低迷。今年度から順次リニューアルに踏み切っており、現状テナントの9割はアパレルだが、その比率を徐々に下げて飲食などの分野を強化する。6月にはファッションと雑貨のフロアだった地下2階の大規模改装を実施し、スイーツなどの軽食を取りそろえた飲食フロアに様変わりさせた。

さらに、渋谷は東急グループを中心とした駅周辺の大規模再開発のまっただ中にある。昨年、渋谷駅の南側にオフィスや飲食店が入った高層ビル「渋谷ストリーム」が開業。今年11月には、駅の真上に建つ「渋谷スクランブルスクエア」の東棟が完成する。この地上47階建ての超高層ビルは、オフィスとともにファッションや飲食などの商業フロアも備える。

こういった渋谷駅周辺の新しいビルには、グーグル日本法人やサイバーエージェントなどIT系を中心とした企業の入居が次々と決まった。今後、渋谷のオフィス人口は格段に増える見込みだが、人の流れが駅前周辺で止まってしまう懸念もある。「パルコの一時閉館や原宿エリアの盛り上がりの影響もあって、(渋谷パルコ周辺の)神南地区は人通りが減った。再開発が進み駅前の利便性が向上すれば、再オープンした渋谷パルコまで回遊する人が急増することは考えづらい」(不動産業界関係者)。

「素敵なカップルが、渋谷の町を散策しながら最後に渋谷パルコにたどり着く。そのような場所にしたい」と意気込む牧山社長。ファッションへの逆風が吹く時代にどこまで館の存在感を出せるか、パルコの真価が一段と問われている。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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