子どもに絶対言ってはいけない「全否定3要素」 たった一言が何十年も子どもを苦しめる事実

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その後も、その言葉が気になって、「自分はこの家にいないほうがいいのではないか」という気持ちがつきまとったそうです。例えば、家族で旅行をしていて電車の座席に全員が座れないときは、「自分がいなければ全員座れるのに」と思ったりなどしました。家族のみんなと笑っていても、心から笑えていない自分に気づくこともありました。成人してからも、自分の存在に自信が持てない状態がずっと続いているとのことです。

長谷川さんのように、存在否定の言葉をぶつけられた人は、自己存在の根本に関わる苦悩を持ち続けることになります。本当に、「自分はいてはいけないのではないか? 自分は、存在しないほうがいいのではないか?」と感じ続けることほどつらいことはないでしょう。これでは自己肯定感など持てるはずもなく、自己否定感にとらわれ続けることになります。

ほかにも次のようなものが存在否定として挙げられると思います。

お前なんか本当は産みたくなかった。産まなきゃよかった。おろせばよかった。どこかに捨てようかと思ったけど、捨てるところがなかった。本当は男の子が欲しかったのに……。3人目は女の子がよかったんだけど……。お前は橋の下から拾ってきたんだ。

親は、このような子どもの誕生にまつわる存在否定の言葉を、冗談半分で言ってしまうことがあります。でも、言われたほうは冗談では済みません。

あなたが、何気なく言っている言葉は大丈夫?

存在否定の言葉はまだまだあります。

お前なんか嫌い。顔も見たくない。お前が側にいるとイライラする。近寄るな。出て行け。消えろ。死ね。お前なんかいなけりゃいいのに。そんな子はうちの子じゃありません。そんなことをする子はいないほうがいい。言うことを聞かない子は要らない。どこかに捨ててくるぞ。もう帰ってこなくていい。

ここまで、人格否定の言葉、能力否定の言葉、存在否定の言葉がどれだけ子どもを傷つけるか見てきました。親が軽い気持ちで発した無遠慮な一言が、子どもを深く傷つける可能性があるということを、すべての親たちに意識していてほしいと思います。

とくに気をつけてほしいのは反抗期の子を持つ親です。子どもの反抗的な態度にイライラして、日頃は気をつけて言わないようにしているひどい言葉を、つい言ってしまうということがありうるからです。

あなたが、子どもに何気なく言っている言葉は大丈夫でしょうか? からかい半分の言葉、冗談半分の言葉、いわゆる「ツッコミ」といわれる言葉などは大丈夫でしょうか? 子どもは笑いながら聞いているように見えても、本当は心の中で傷ついているかもしれません。

今までこういった言葉を発していた人は、今日を限りにやめましょう。そして、これらとは正反対の言葉を子どもに贈ってあげてください。いちばんよいのは子どもの存在を無条件で丸ごと肯定する言葉です。

あなたのことが大好き。あなたといると楽しい。あなたがいてくれるだけで幸せ。今日も一緒にいられてうれしい。あなたは私たちの宝物。大好きだよ。ママとパパのところに生まれてくれてありがとう。おかえり。無事帰ってきてくれてよかった。

こういった言葉を、日頃から繰り返し贈ってあげてください。そうすれば、子どもの自己肯定感が大いに高まりますし、親子関係も非常によくなります。それについては、本連載の過去記事『「誕生日アピール」する子どもの切ない心理』も参考にしてください。

親野 智可等 教育評論家

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おやの ちから / Chikara Oyano

長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。読者数は4万5000人を超え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』など、ベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。全国各地の小・中学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。ブログ「親力講座」もぞくぞく更新中。講演のお問い合わせとメルマガ登録は公式サイトから。Xで毎日発信中。

 

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