進まぬ脱炭素、大企業が政府にイエローカード G20を前に「再エネ50%」「炭素課税」を提言

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日本の大手企業や運用会社が強いメッセージを発した背景には、地球温暖化対策が進まないどころか、むしろ後退する可能性すらあることへの危機感がある。

G20サミットに先立つ6月15~16日にかけて、長野県軽井沢町で開催されたエネルギー相および環境相による閣僚会合では、気候変動対策についてほとんど何の成果も見られなかった。アメリカと欧州諸国などの政策の不一致から、会合後の閣僚声明文で「脱炭素化」の文字が入らなかったことがその象徴だ。

その代わりに、水素エネルギーの利用や化石燃料の利用を前提とした二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術の開発など、実現するかどうかまだわからない技術を追求していくと強調した。

G20ホスト国として日本の役割はきわめて重要だ

6月28日に開催されるG20サミットでも同様の事態が想定される。そのことを危惧した国連環境計画金融イニシアティブなど7つの団体は、安倍晋三首相宛てに書簡を送付。その中で、再エネ比率を35%に引き上げる必要性や、今後10年間に温室効果ガス排出を急速に減らすことの重要性を強調した。書簡は「G20ホスト国としての日本が地球温暖化問題できわめて重要な役割を担っている」と述べている。

「再エネ調達は企業の競争力に直結する」と語るアラルコン氏(撮影:尾形文繁)

コスト低減が進み、再エネの導入量は世界規模で拡大している。企業が自社で使用する電力の100%を再エネに切り替える活動を支援するNGO「ザ・クライメート・グループ」のRE100事務局でキャンペーンマネージャーを務めるコンスタント・アラルコン氏は、東洋経済のインタビューで次のように述べている。

「RE100に加盟する180社のうち、アップルやグーグルなどすでに20社以上が自社の使用する電力のすべてを再エネで賄うことを実現している。加盟企業のうちすでに5割以上の企業が、自社使用電力の50%以上を再エネで賄っている。最近では、サプライヤー(調達先企業)にも再エネ調達の取り組みを求める動きが広がる中で、再エネにアクセスできない企業は、世界のサプライチェーンから取り残されることになりかねない」

火力や原子力発電に依存する電力会社に配慮しているうちに、日本はパリ協定成立前に掲げた「2030年度に22~24%」という電力分野における再エネ目標を見直すこともなく今日に至ってしまった。このままでは、国内における再エネ導入の遅れのツケを大手企業を含むユーザーが支払うことになりかねない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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