「遠くへ行きたい」が圧倒的な支持を集める理由 唯一の「JRグループ」提供番組のこだわり
つまり、国鉄が分割民営化する前の時代からCM提供を行っていたから、「JRグループ」という名称が残っているということ。長い歴史と実績を持つ「遠くへ行きたい」ならではのことであり、「JRグループ全体の共有財産のような番組」といえるのかもしれません。
詳しくは後述しますが、だからこそ同番組は、旅行好きだけでなく、鉄道ファンたちの支持を集めているのです。
番組は、「毎週1人の旅人(芸能人、文化人、アスリートなど)が日本各地を旅する」というシンプルなコンセプト。しかし、「遠くへ行きたい」は効率化・単純化が進むテレビ業界の中では異例といえるほど、労力と手間をかけた作り方をしているようです。
その象徴といえるのが、企画の段階で旅人と必ず会って話をすること。ディレクターが行き先の目星をつけつつも旅人と会い、希望や興味の有無をヒアリングしながら、行き先を決めているのです。「タレントへのヒアリングは、メールでアンケートをやり取りするだけ」という番組が多い中、なぜ非効率と思われる方法を採用しているのでしょうか?
土橋「旅人は企画の段階から参加して、ロケに行って、自らナレーションを入れてもらうまで、すべてのパートに参加してもらうので、最初に会って話したほうがいいんですよ。それと、この番組は『誰がどこへどういう目的で行って、その結果こういうものと出会って』というだいたいの骨組みがあるだけで台本はないですし、セリフで決まっているところは一つもありません」
ほかの旅番組と決定的に異なるのは、現場重視のドキュメンタリー感。「旅人の自然かつ魅力ある表情を引き出すためには、顔を合わせた事前の打ち合わせが欠かせない」ということでしょう。ロケ先に、「旅番組にはつきものの現地コーディネーターがいない」ことも含め、リアルな旅のムードを醸し出す努力が随所に施されているのです。
中でも、それが如実に表れているのは、旅先で名物料理を食べるシーン。他番組のいわゆる“食レポ”とは一線を画す演出が施されているのです。
「食リポ」と「撮り直し」はしない
土橋「おいしさを伝えるためには、食べるまでの“準備”をきちんと撮ることが大事。視聴者はそれを見ている間に、味を想像することができるんですよ。実際に食べたシーンでおいしさがわかるのではなくて、それまでにおいしさを共有できるようなお膳立てをしておくわけです。例えば、魚を捕まえる。さばく。火を起こす。焼くと表面がジリジリ焦げて、脂が滴る。それだけを見ていると、おいしそうで食べたくなりませんか?」
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