五輪インフラにも影響、深刻な建設の人手不足 女性と外国人の活用拡大が喫緊の課題
だがこれには制約がある。同制度の本来の目的は、発展途上国の実習生に日本の技術を移転し、国際協力・国際貢献を図ることだ。日本国内の労働力不足を解消するためのものではない。習得に時間のかかる建設関係の技能労働についてはこれまでも期間延長を求める声が出ていたが、なかなか認められなかったのはこのためだ。
そこで緩和措置を被災地の復旧・復興事業や東京五輪関連施設の整備のための期間限定的なものにするなどの方法が検討されている。
五輪まであと6年だが、実際にはその前年のラグビーワールドカップがメド。そうなるとすぐにでも期間延長が必要だ。現場からは「実習生の準備期間を考えると、一刻も早く実施してほしい」と早期の緩和措置を切望する声が多く聞かれる。日本に受け入れる技能実習生を技能検定の合格者に限定し、受け入れる企業も優良と認められるものだけに限定する方法も有望だ。
こうした動きに先んじるのが、サブゼネコンの向井建設だ。同社は12年、ベトナムに職業訓練校を開設した。年間240人のベトナム人研修生が現地で選抜され、日本語を習得しながら高所作業、鉄筋、型枠、内装の4種業の指導を受ける。4カ月の研修を終えた後に日本で長期の技能実習に入る。
この職業訓練校は、日本滞在を経て本国に帰国した後も見据えている。日本企業がベトナムで施工する際のリーダーとなる人材を育成することを主眼としているのだ。
13年3月、日本とベトナムは建設分野での国際競争力強化を図るために人材育成の覚書を取り交わした。これを足掛かりに日本が目指すのは、6億の人口と1.8兆円の名目GDP(域内総生産)を擁するASEAN共同体だ。
12年7月31日に閣議決定した日本再生戦略で20年度には2兆円以上の建設業の新規海外受注を目指す日本のゼネコンにとって、来年誕生する同共同体は極めて魅力のある市場になる。東京五輪の後、国内の建設需要は沈むため、ASEANが重要になる。そのカギが研修生の受け入れ強化。これをしっかりできるかどうかが、日本のゼネコンの将来を決めるかもしれない。
(週刊東洋経済2014年1月25日号<21日発売>核心リポート03を転載)
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