「両利き経営」実現にはトップの覚悟が不可欠 変革が必要なのに「なぜ変われない」のか

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経営共創基盤の冨山和彦氏と早稲田大学教授の入山章栄氏の対談後編。富山氏はトップの迅速な改革がいかに経営に必要不可欠かを指摘する(写真:Funtap/iStock)  
既存の業界秩序が破壊される時代、既存事業の「深化」により収益を確保しつつ、不確実性の高い新領域を「探索」し、成長事業へと育てていく「両利きの経営」が欠かせない。
この「両利きの経営」研究の第一人者であるチャールズ・オライリー、マイケル・タッシュマンの著作が、『両利きの経営――「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』として刊行され、話題になっている。
同書の邦訳版には、経営共創基盤の冨山和彦氏と早稲田大学教授の入山章栄氏という、日本における実務と研究の第一人者が関わり、それぞれが解説を寄稿している。
前回はその2人が、両利きの経営の留意点について議論したが、今回は両利き経営を実現していくための経営者のリーダーシップについて入山氏が、冨山氏の豊富な経験知を聞き出していく。

たたかれないのは、抜本的変革をしていないも同然

入山:今、日本の大企業を見ていて共通するのは、経営者にも若手にも危機感があるのに、ミドル層が保守的になりがちなことです。それなりの役職に就き、家庭もあり、年齢的にも「ギリギリ逃げ切れるかもしれない」と思うのでしょう。そうなると、やはりトップが動かないといけないわけですが、冨山さんは、既存事業の縮小など大変革を迫られているトップに、どのようなアドバイスや投げかけをされるのでしょうか。

『両利きの経営――「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

冨山:変革しようとすると、少なくとも短期から中期の時間軸では、ストレスが加わってつらい思いをする人が必ず出てきます。ずっと野球をやっていたのに、明日からサッカーをやれと言われるようなもので、自分自身のトランスフォーム(変身)を強いられ、ひどい場合は「事業売却するから、この船から降りてください」と宣告される。あるいは、評価軸が変わったせいで、安泰だったはずの執行役員や常務のポストに就けない。

そうやって光と影が出てくれば、経営者に対する批判も出てきます。そこをとにかく飲み込んで、頑張らないといけない。過激なビジネス誌に悪口を書かれるくらいでないと、何もしていないのも同然だと、役員会ではよく言います(笑)。

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