北海道並みに厳しい、「JR四国」の生き残り策 利便性改善狙い減便や運賃値上げの可能性も

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列車本数は、瀬戸大橋線開通による岡山発着列車が特急および快速「マリンライナー」の計で延べ136本新設のほか、四国内特急も高松~松山・高知・徳島間だけで22本の増がある。都市圏輸送では高松地区を筆頭に松山、徳島、高知の各地区で快速・普通列車を計177本も増やし、特急定期券や短距離特急料金の設定も行ってきた。これにより乗客1000人あたり列車本数14.2本と、JR各社の中で突出した数字が算出され、通過人員があまり多くない線区でも列車本数を維持して乗車機会を創出している。

予讃線電化が松山に通じた際に投入された8000系電車はまだまだ主力(写真:山井美希)

しかし、四国4県の人口は全国に先駆けて減少し、1988年度より44万人のマイナス。一方、高速道路延長はJR発足時のわずか11kmから529kmとなり、四国内の計画の80%に達した。自動車の保有状況は1987年度との比較で1.56倍。一方で四国内の流動における鉄道のシェアは、1975年度に21%あったものが1990年度は4.1%、2009年度は1.5%(以後は継続的データなし)となった。

また、輸送人キロは1990年前後の時期、年間20~21億人キロだったものが、近年14億人キロ台となっている。訪日客で少し持ち直しているが、その幅はわずかでしかない。輸送密度(1kmあたり1日平均通過人員)で見ると、1989年度のJR四国平均6513人だったものが、2017年度は4730人となった。現状、瀬戸大橋線と予讃線高松付近のみ2万人を超えるが、他区間は大きく差が開いて4000人ないし1万人レベルが予讃線松山までや高徳線・牟岐線の一部、他の予讃線松山以西や土讃線、徳島線などは2000~3000人レベルである。国鉄再建法当時の特定地方交通線基準の4000人未満が占める割合は全線の35%から65%に拡大している。

営業黒字になったことはない

100円の収入を得るために要する費用として算出される営業係数(2013~2017年度平均)は、本四備讃線のみ100を切って84だが、他は予讃線松山までと高徳線引田までが100台前半、その他は予讃線宇和島方面、土讃線須崎、牟岐線阿南までが150~200のレベル。JR四国全線平均で144、最も収支率が悪い予土線は1159と算出されている。

運輸収入は1991年度370億円に対し、2017年度は239億円と3分の2の水準に下がった。むろん、営業損益が黒字になったことはなく、会社発足時から営業損失補填のために措置された経営安定基金の運用収益などを加えて経常黒字を確保する構図だが、運用益が確保できずに経常赤字となっている年度も散見される。

経営安定基金は長期の低金利で当初予測より大幅減となっているため、政府系の特殊法人に運用して高利回りを得る措置が講じられ、2021年度までは固定資産税などの軽減措置も取られている。2011年度からは鉄道・運輸機構の利益剰余金などを活用し、JR北海道とともに、2031年度まで経営安定基金の積み増しと、2020年度まで設備投資への支援が講じられ、さらに2016~2020年度には安全対策に対する追加的支援措置が講じられた。

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