エマニュエル:フランス以外の国では、イタリアも職場での女性の服装にエレガンスを求めるけれど、イタリアもまた高級ブランドの洋服の輸出国だよね。イギリスはとくに男性の職場での服装に気品を求めるため、男性向けの高級ブランドが多い。
くみ:そうだね。でも管理職ではない、一般的な女性社員はこんなふうに高級ブランドの洋服を職場に毎日着ていくことはないんじゃない?
エマニュエル:ファッションにそんなにお金をかけられるほどの経済的余裕がないから、高級ブランドなんてバーゲンの時期とか、シーズンオフで値段が下がったときぐらいじゃないとなかなか買えないだろうね。
一般職員の女性は、エレガントな装いを追求するというよりも、自分の好きな洋服を着るというスタンスかな。だからまったく統一感がなくてバラバラな感じ。フェミニンな格好をしている人もいるし、カジュアルな人もいる。もちろん、大企業かどうか、公務員か民間企業かによってある程度服装の傾向も変わるけどね。よく見かける例としては、シャツに細身のパンツやジーンズにフラットシューズみたいな恰好。堅苦しくなく、快適であり、そこそこまじめな感じ。
パリではスーツの男性をあまり見かけない
くみ:そういう格好は本当によく見かけるね。ただ日本だとジーンズやフラットシューズという時点で、相当カジュアルな職場か、あるいは働いていないのかな?と思わせるような規範みたいなのはやっぱりフランスと違うね。
エマニュエル:じゃあ、くみは日本とフランスの男性の職場での服装の違いについて何か感じたことはあった?
くみ:私がパリで暮らし始めて驚いたことの1つが、まさにそれで、東京では見かけない日がないほどスーツにネクタイ姿の男性はよく見かけるのに、パリではとても少ないということ。東京ではオフィス街に行かなくても、繁華街、電車、駅前、どこでも普通に見かけるんだけど、パリではオフィス街でもスーツにネクタイまで締めている人はそこまで見かけないから、「え、仕事してる人がそんなに少ないの?」って違和感があったくらいだった。
だけど、普通に会社勤めしている男性も、下はジーンズやチノパンにスニーカー、上は色付きや柄シャツにカラーセーター、リュックとか手ぶらとかで、ジャケットも着てない人がいくらでもいるということがだんだんわかってきた。まるで休日のカジュアルな街着みたいな印象だから、私はそういう格好の男性がまさか普段の会社勤めだとは思っていなかった、というわけ。