国も見落とすソフトバンク「4年縛り」契約の罠 自宅用WiーFiとセット割引で契約者囲い込み

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では、Airの支払いを購入補助費で完済した3年後ならば自宅用WiーFiの契約から抜けやすいかと言えば、そうではない。

最初の2年契約の満了時に、残り12カ月分の購入補助費を受け取るためには、自宅用WiーFiの2年契約を更新しなければならないからだ。その結果、3年後に自宅用WiーFiの契約から抜けると、2回目の2年契約を途中解約したことになり、たちまち違約金1万0260円が課せられるのだ。

この「実質4年縛り」とも言うべきソフトバンクの自宅用WiーFiの販売手法は、携帯通信プランの囲い込みを破壊しようという政府の方針にも大きな影を落とすものだ。

KDDIの光回線は3年縛りの契約を展開

ソフトバンクを含むキャリア各社は、携帯と自宅用WiーFiや光回線の通信プランにセットで加入すれば、毎月の携帯通信料を1000円割り引くようなセット割引を行っている。ソフトバンクやNTTドコモの場合、自宅用WiーFiや光回線を契約する人の家族であれば、同居していなくても携帯の通信料の割引対象になる(KDDIは同居家族のみ対象)。

大きなセット割引を受けられるため、利用者は携帯と自宅用WiーFiや光回線の通信契約を同じキャリアでそろえたくなる。総務省がソフトバンクの自宅用WiーFiの実質4年縛りを認めれば、利用者は携帯の契約でも4年間、他社へ移りづらくなる。

ソフトバンクAirの自宅用WiーFiは、表向き2年契約をうたいながら実質4年契約を強いるため悪質だが、KDDIも光回線で途中解約すると1万6200円の違約金を課す3年縛りの契約を展開している。唯一、NTTドコモは光回線を2年契約にとどめているが、高額の違約金は存在する(戸建て1万4040円、マンション8640円)。

総務省が携帯の2年契約縛りの違約金を1000円程度に引き下げても、長期間の縛りがある自宅用WiーFiや光回線の契約と携帯の通信契約とのセット割引を野放しにすれば、多くの利用者は自由に携帯プランを乗り換えられるようにはならないだろう。本気で競争を促す改革をするつもりであれば、ここにも改革のメスを入れるべきだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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