婚活に苦戦する恵さんが息抜きに立ち寄っていたダイニングバーがある。店員と常連客の距離が近く、時々合コンを企画してくれるような店だ。そこで楽しく飲んでいたとき、恵さんは直樹さんから見初められたらしい。
「外国人観光客が店に来ていたので英語でしゃべっていた私を見て、『カッコいい』と思ってくれたそうです。そのときに声をかけられたわけじゃありませんけど」
法人営業の仕事をしている割には引っ込み思案な直樹さん。離れた席から「いいな~」と思っているうちに恵さんは帰ってしまった。直樹さんは当日のことを小さな声で説明する。
「お店の人に相談したら、『彼女の連絡先を勝手に教えるわけにはいかないけれど、今度彼女がお店に来るときは連絡するよ』と言ってくれたんです」
エラいぞ、直樹さん。今どきのアラサー男性にしては上出来である。筆者が興奮気味に直樹さんを誉めると、隣で聞いていた恵さんが「そうですかぁ?」とあきれ気味の声を上げた。恵さん、帰る場所があるから積極的な40代、50代の既婚男性と、未婚の若者を比べてはいけない。
関西人にとって「話が面白くない」は致命的な欠点
「一緒に食事には行きましたが、私はやっぱりピンときませんでした。直樹さんは話が面白くないからです(笑)。今ではそこも含めて好きなのですが、当時は交際を続けることすらためらっていました」
関西出身の恵さんにとって、「話が面白くない」は致命的な欠点だったのだ。しかし、恵さんには強力な先達がいた。すでに3人の子どもの母親である現実的な妹だ。
「相談したら、『お姉ちゃんは上から目線! アンタはどれだけのもんや』と叱られました。ギャンブルもしない、暴力も振るわない、ちゃんと働いていて、私のことを好きでいてくれる独身男性。しかも若い。それで十分やん、と」
妹は前向きかつ具体的なアドバイスもしてくれた。直樹さんに「面白くない話をしてみ?」とお願いすることだ。実践すると、彼は怒らずに本当に面白くない話をしてくれたと恵さんは笑う。
「面白くないことをネタにできるのであれば問題ない、と気づきました」
婚活カウンセラーからの教えも有効だった。自分が求める家族観を書き出す宿題があり、恵さんは「情に厚いこと」「お互いに裏切らないこと」などを言葉にしたのだ。それを思い出すと、直樹さんは「めっちゃいい」旦那さん候補だった。
ネガティブな予想を立てるのがうますぎていたと反省する恵さん。デートでポイントカードを使う男性は嫌、ツアー旅行を利用する男性は嫌、など「しょうもない条件」にもとらわれていたらしい。
一方の直樹さんはもう少しボンヤリした、いや大まかな感覚で交際相手を探していたようだ。
「以前に4歳年下の女性と付き合っていたことがあるんです。有名大学を出て有名企業に勤めているのにブリッ子で、話が合いませんでした。年齢が離れているとうまくいかないのかな、次は同い年の女性がいいなと思っていました」
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