「プレステの父」がスマニュー参画で描く未来 久夛良木氏「すべてのメディアが大変革する」

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――スマートニュースは先日、調査報道支援を行う子会社・スローニュースの設立を発表しています。ここからオリジナルコンテンツ強化へと発展する可能性があるでしょうか。

鈴木健氏(以下、鈴木):スローニュースはあくまで、外部にいるジャーナリスト個人やチームをバックアップするための組織で、スマートニュースだけのためのコンテンツを作ろうという意図はない。当社の最大の価値は、ニュースアグリゲーターとして最も使いやすいアプリを開発・提供していくことにある。得意なことだけにリソースを結集しなければ、世界で戦えるサービスになれない。だから今後も、コンテンツ調達は外部メディアとのパートナーシップで、という方針を変えるつもりはない。

一方で、スマートニュースとしても「ぱっと見て終わり」というコンテンツだけでなく、もっと読み応えのあるものをというニーズには応えていきたい。今回の取り組みが、そういったニーズに資するインキュベーション(支援・育成)になればとは考えている。

やりたいことはいくらでもある

――ここ1年でアメリカ事業が成長している要因は何でしょう?

鈴木:プロダクトがアメリカ市場にきちんとフィットしてきたのが大きい。アメリカは日本と比較にならないくらいの圧倒的な多様性がある。アメリカ版のアプリ自体は2014年10月に投入しているが、機械学習のエンジンがだんだん鍛えられてきて、やっと多様性に対応できるまでに進化してきたということだ。

個人の興味・関心を基に最適化された「For You」タブ。興味を“狭める”のではなく、“広げる”ための独自アルゴリズムで表示している(写真:スマートニュース)

とくに手応えを感じているのが、2017年に出した「For You」という機能だ。スマートニュースでは当初、つねに新しい発見があるニュースアプリにしたいという思いから利用者ごとのパーソナライズを行っていなかった。一方社内では、「パーソナライズによって生まれる発見もあるのではないか」という議論がずっとあり、興味を狭めるのではなく、むしろ広げる個人最適化エンジンの開発に取り組んできた。それをサービスに落とし込んだものが「For You」で、現地で非常に重宝されている。

アメリカは2016年の大統領選挙以降、保守派とリベラル派に社会の分断が進んでしまっている。そんな中でスマートニュースは「ポリティカルバランシングアルゴリズム」という仕組みを入れて、どちらの側の人にも、それぞれの要素を含む記事をバランスよく出すようにしている。この取り組みをアピールするテレビCMも打ち、社会の分断に問題意識を持っている層や、自分の情報取得環境をヘルスにしたいと思っている層にうまく訴求できた。

――グローバルに開発体制を整えることで、具体的にどんなことを進めますか?

鈴木:先のポリティカルバランシングアルゴリズムも今新バージョンの開発に着手しているし、ほかにも一つひとつの機能をブラッシュアップしたい。もちろん動画含め、コンテンツの種類や見せ方の拡充もやっていかなければならない。今日本で取り組んでいるクーポン配信のような、生活の中で役立つ機能も増やしていきたい。やりたいことはいくらでもある。

アメリカでは2020年にまた大統領選挙がある。前回の選挙で社会のモメンタムが大きく変わったように、今回も変わる可能性がある。これはスマートニュースにとってある種の追い風。うちだからこそ狙える巨大なホワイトスペースがあると感じている。社会の分断を深めるのではなく、橋を架けるようなアプリとしてさらに進化したい。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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