「プレステの父」がスマニュー参画で描く未来 久夛良木氏「すべてのメディアが大変革する」

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――参画の経緯を教えてください。

久夛良木健氏(以下、久夛良木):ユーザーとして長くスマートニュースを使っている中で、なかなかいいサービスだなと感じていた。ほかにもいろいろなニュースアプリが出てきた中でも、スマートニュースはとりわけUX(ユーザー体験)に優れ、すべてがさくさく動いてとても使いやすい。タブを移動するときのページをめくるようなアニメーションにもモッタリしたところがなく、洗練されたUI(使い勝手)やデザインといい、あらゆる面でしっかりしたテクノロジーが裏にあるアプリだと感じていた。

くたらぎ・けん/1975年にソニー入社。1993年ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)設立に参加。1999年にSCE社長、2003年にソニー副社長、2007年にSCE会長退任。2009年よりサイバーアイ・エンタテインメント社長(編集部撮影)

昨年の9月に、以前ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の執行役員だった西村(茂・スマートニュース常勤監査役)さんから、鈴木(健・スマートニュース社長)さんと浜本(階生・スマートニュースCOO)さんを交えて1度食事をしないかという話があった。その出会いをきっかけに、今年に入ってから社外取締役への就任を依頼され、これからが面白そうなので積極的に関わってみようと思った。

今のスマートニュースの規模感は、プレイステーションの創業時の組織に近い。このくらいの時期って、ビジネスモデルの策定から新製品開発までが同時並行的に動くので、すごくエキサイティングな時期だ。また、社内にプログラミングコードを書けるエンジニア集団を抱えているというのも重要なポイント。よくありがちな大企業のように、仕様書を作るだけで実際の開発行為は外注に出してしまうのではなくて、自分たちで軽快にチャレンジできる環境がいい。

新たなコンテンツ群を産み出す

――報道、エンタメ、コンテンツなど、スマートニュースを取り巻く環境は今後どうなるとみていますか。

久夛良木:ニュースアプリに限らず、テレビも新聞も出版も、既存メディア業界全体がネットワーク化の大変革の荒波に呑み込まれる中で、それぞれのメディアの役割も問い直されつつある。スマホのさらなる機能向上に呼応して今後5Gネットワークの普及が進めば、ニュースコンテンツそのものの定義も変化していくだろう。近年の顕著なトレンドは、テキスト・静止画から動画視聴へのシフトだ。しかも、コンテンツの発信元はいまやプロ・コンテンツに止まらず、すでに一般の人々のスマホやドライブレコーダーで撮影された動画が事件・事故の第一報になったり、ドローンで撮影した動画が時に既存テレビ放送より高精細であったりもしている。

ここ最近のゲーム業界の潮流でいうと、異なるプラットフォーム間の垣根を越えてネットワーク経由で相互に楽しめるゲーム共有体験に急速にシフトしつつある。これはゲームの楽しみ方の定義を変える大きな流れだ。ネットワークを介してのリアルタイム性が一段と増し、従来ファンタジーの世界の中にとどまっていたゲームが今後リアルワールドと密接に融合していくことで、関連する産業規模が一気に跳ね上がる可能性がある。Googleを始めとするアメリカ、そして中国もここに大量の資源を投入して未来の変革を起こそうとしている。

ネットを介してすべてが融合していく時代に、スマートニュースは今後どんなサービスを目指すのか。すでに社内ではいろいろと検討されているはずだ。ゲーム、音楽、映画、そして最先端のテクノロジーに深く関わってきた立場から、さまざまな局面で助言できることがあるのではと思っている。

――例えば、どんな方向がありそうですか?

久夛良木:1つは、これまでにない新たなコンテンツ群を産み出すこと。どのニュースメディアでも似たり寄ったりでは面白くない。UGC(ユーザー発のコンテンツ)をうまく取り込んでいく手もある。いずれにせよ、コードを書けるエンジニア集団が社内にいるのは大きい。試行錯誤しながらも、積極果敢に未来を切り拓いていって欲しい。

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