「安倍靖国参拝」に、米国はなぜ失望したか 日米同盟、日中韓3国関係に支障きたす

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安倍首相のナショナリズムと日本の国益

――安倍首相の戦略は考え抜かれたものだと思いますか。たとえば、安倍首相は、米国の日本に対する安全保障の永続性に懸念があり、そのことを米国に警告しているとか。

靖国参拝と広範な戦略的課題との間に関連があるとは思えない。その必然性はない。日本は現在の安全保障上の課題について、その国際的なあり方や有効性に関して、なにも靖国参拝で明示的にしなくとも、課題の一つひとつを実現させていくことができる。それとは反対に、わざわざ靖国を参拝したことは、安倍政権が明確に説明してきた多くの戦略上の目標を、実現させるうえで障害物となりかねない。

安倍首相のジレンマは、自らのナショナリズムと日本の国益との間でどっちを選択するかということだ。

憲法9条の見直しや集団的自衛権の行使を含む、日本の安全保障のあり方をめぐる持続的な進展は、日本では米国との安全保障協力を強化するために考えられていると私は理解している。しかし、日本が最終的に独立した防衛力を持つ必要があり、そのためのステップを踏む必要があるというのは、信頼すべき日本の人たちから聞いたことがない。

私と話をした日本の人たちは、現在の安全保障の政策課題は米国との連携促進のために企画されており、靖国参拝をめぐる問題はそれを妨げるだけだと言う。

しかも、日本には軍事大国の野心を満たすだけの胃袋にもはや余裕はない。そのことは人口減少や財政制約とも相まって強力な抑制として働く。また、それは憲法とは何の関係もなく、多少ふらついているかもしれないが、いかなる軍事大国への野心をも打ちのめすものだ。

こうした抑制は、東アジアでの安全保障上の役割拡大を選好する日本にとっては有効に働くだろう。日本の軍国主義復活を懸念させるような事実上の根拠は何もない。しかし、安倍首相の靖国参拝がそうだったように、少しでも軍事大国の野心をのぞかせるような問題を引き起こすと、多くの日本人が志向しているような安全保障上の役割拡大とはならず、その障害となるだけである。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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