米雇用統計、5月は7.5万人増に大幅鈍化 賃金上昇率も予想下回り利下げ観測高まるか
[ワシントン 7日 ロイター] - 労働省が7日に発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化したほか、賃金上昇率も予想を下回った。経済活動のモメンタム低下が労働市場に広がっていることが示され、米連邦準備理事会(FRB)による年内利下げ観測が高まる可能性がある。
非農業部門の雇用者数は7万5000人増加。ロイターがまとめたエコノミスト予想は18万5000人増だった。時間当たり平均賃金は前月比0.2%増。予想は0.3%増だった。
3月と4月を合わせた雇用者数は従来から7万5000人分下方改定された。
5月の雇用の伸びは、労働年齢人口の伸びを維持するのに必要な約10万人を下回った。
オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)などが5日に発表した5月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が9年超ぶりの小幅な伸びにとどまった。今週発表された別の統計では、人材募集のオンライン広告が減ったことが分かった。
一方で週間失業保険申請件数や5月の非製造業総合指数(NMI)の雇用指数は労働市場に基調的な底堅さがあることを示唆し、労働市場は5月の雇用統計が示すほど脆弱ではないとみられる。
時間当たり賃金は前月比0.2%(6セント)増と、前月と同じペースで伸びた。前年同月比は3.1%増と、前月の3.2%増から鈍化した。
平均週間労働時間は前月と同じ34.4時間だった。
賃金の伸びが緩慢な状態が続いた場合、物価が目標の2%に戻るというFRBの見方に懐疑的な見方が出る可能性がある。金融市場では今年2回の利下げが織り込まれつつある。
第1・四半期は輸出や在庫、防衛支出が寄与し一時的に景気が加速したものの、この日の軟調な雇用統計以外に個人消費支出や設備投資、製造業、住宅販売の指標も第2・四半期の景気減速を示唆している。前年に導入された減税政策や財政出動の影響が薄れるにつれて、成長が鈍化しつつある。
アトランタ地区連銀の国内総生産(GDP)見通しは第2・四半期が年率で1.5%増。第1・四半期は3.1%増加していた。
5月の失業率は横ばいの3.6%と、約50年ぶりの低水準を維持した。過去4カ月間は労働参加率が下がっていることも失業率を抑制する一因となっている。
雇用統計の内訳は、製造業が3000人増。貿易摩擦の影響を判断するために製造業の雇用は注視される。製造業では生産が軟化しているほか、景況感も5月に31カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。企業は主に貿易摩擦を懸念材料に挙げている。
建設業は4000人増。一方、政府雇用は1万5000人減少した。
5月の雇用統計には、このところの貿易摩擦の高まりは反映されていない。エコノミストらは、米国が主要な貿易相手国である中国やメキシコと対立していることが景気に打撃を与えると警告している。
米経済はこれまで、貿易摩擦の影響を大方免れている。トランプ米大統領は5月上旬に2000億ドル規模の中国製品に最大25%の関税を課し、中国も報復措置を導入した。先週にはトランプ氏が、メキシコの不法移民対策が不十分だとして同国からの輸入品に関税を課すと表明。10日から5%の関税を課し、メキシコの対策次第で段階的に引き上げる方針だが、両国は関税回避に向けた協議を続けている。
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