巨額赤字の野村HD、“リーマン獲り”の重荷

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巨額赤字の野村HD、“リーマン獲り”の重荷

世間を驚かせた“リーマン獲り”から4カ月。野村ホールディングスが、大幅リストラを迫られている。

野村が1月27日に発表した2008年4~12月期連結決算(米国会計基準)は、4923億円の最終赤字。同10~12月期だけで赤字幅は3429億円にも上り、自己資本を大きく毀損した。

悪条件は確かに重なった。昨秋のリーマンショック以降、金融市場が一段と混乱する中で、株式や債券の売買・取り次ぎなどに関連した業務での損失が大きく膨らんだ。保有金融資産の価格下落に伴う評価損失もかさんだ。

人件費増の重荷

野村の事業環境は依然、予断を許さない。金融混乱は収まっておらず、株式だけでなく、あらゆるリスク資産の価格が低迷。「現時点で将来に(保有資産などの)損失が出る可能性は極力排除した」と仲田正史執行役CFO(財務統括責任者)は話すが、野村には今後さらなる負担がのしかかる。リーマン買収に伴う人件費の恒常的な増加である。

野村は08年9月に破綻した米リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門などを買収。年末時点で野村グループの総員は約2万6000人と、リーマン買収前から約8000人増加した。この規模を維持すれば、年間の人件費負担は従来比で800億円近く増す。

その分、野村が事業規模を拡大できるかといえば、現状では難しい。野村は、主要部門の責任者にリーマン出身者を登用し、M&A仲介の獲得件数を伸ばすなど「統合の成果は出ている」(役員)と主張する。が、有価証券の売買・取り次ぎや企業の資金調達支援といった投資銀行ビジネスをめぐる金融環境は、リーマン買収前と一変した。ある外資系証券の幹部は、「投資銀行ビジネスの市場規模は、ピーク時の3分の1まで縮んでもおかしくない」とみる。

自己資本の30~40倍以上もの借り入れ(レバレッジ)で資産を膨らます欧米型投資銀行のビジネスモデルは崩壊した。米ゴールドマン・サックスなどが銀行への転換を余儀なくされたように、「銀行の国際規制に従い、レバレッジは10倍台へと収斂し、全世界的に投資銀行の事業規模は縮む」(同)。

米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などの格付け会社は、野村とグループ企業を格下げした。S&Pの吉田百合主席アナリストは「将来の収益環境が不透明な中で、リーマン継承に伴う人件費増など財務リスクが増大している」と分析する。

野村は欧州で1000人規模の人員削減を進めているが、今後、全世界でより大胆な追加リストラが必要となる可能性もある。野村経営陣は思わぬ誤算に頭を抱えている。

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(武政秀明 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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