ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く

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村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない。「優秀な弁護団」も、村木さんの弁護を受任した弘中惇一郎弁護士の実績は公知のことで、村木さん自身が弘中弁護団を選択しているのだから、これも運ではない。

細野祐二(ほそのゆうじ)/1953年生まれ。1975年早稲田大学卒業、日英のKPMGで会計監査とコンサルタント業務に従事。2004年キャッツ株価操縦事件に絡み有価証券虚偽記載で逮捕・起訴、10年有罪確定。現在は企業コンサルティングと財務諸表危険度分析に関し研究および執筆。(撮影:今井康一)

唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったことだ。『私は負けない』によれば、弘中弁護士は当時、「事件が起きた場所は東京で、被告人もほかの関係者も東京周辺にいる人なのだから(公判を)東京地裁に移管すべきだと主張しようと思ったが、評判のいい裁判長だったのでやめた」と語っていたそうだ。

判決文を読む限り、フロッピーディスクの改ざんや(偽の障害者団体代表が村木さんを連れて石井一国会議員を訪ね、厚労省への口利きを頼んだとする日は)石井議員がゴルフをしていて不在だったことが無罪判決の理由となっている。それでも検察官の面前で取られたいわゆる「検面調書」は豊富にあった。客観証拠を重視する横田裁判長が担当しなければ、村木さんは有罪になる可能性があった。

弘中弁護士の事務所がリーガルチェック

──公判廷では、公判証言よりも検面調書のほうが信憑性は高いとされるのだそうですね。

公判証言よりも検面調書を信じるべき状況を「特信状況」という。そして特信状況にあるかどうかを厳格に立証することは、刑事訴訟法が要求していない。「外部的な特別の事情が立証されなくても、特信状況の存在を推知せしめられれば十分である」という最高裁の判例もある。それにもかかわらず、横田裁判長は本件で「刑事訴訟法上の特信状況を客観証拠と整合する範囲に限定して認める」という画期的な判断を示した。

──本書は弘中弁護士の法律事務所によるリーガルチェックを受けたそうですね。

弘中弁護士は村木さんの事件で無罪判決を勝ち取った当人であり、私はライブドア事件の最高裁審理において会計分析をお手伝いした。それ以来のお付き合いだ。

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