ボルボ「XC90」のディーゼルは何がどう違うのか 大型SUVとディーゼルエンジンは「好相性」

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また8速ATが巧みなマネージメントを行うことで、最大トルクをうまく使いつつ矢継ぎ早に変速していくので、力不足を感じずに効率のいい回転域で走れてしまう。この辺りは巨大トルク&多段化ATだからこその感覚で、無理なく力を得て燃費を犠牲にしない感じだ。

しかもそれが加速感にも現れており、軽やかな加速ながらもスッと速度が載っていく感覚があって爽快な味わいをもたらす。燃費はWLTCモードで13.6km/Lと、その車格を考えれば良好な数値といえるだろう。加えてXC90ともなると燃料タンク容量も大きいから、1タンクでの航続距離も長く、大型SUVにありがちな頻繁にガソリンスタンドに行かなければならない面倒くささも回避してくれる。

SUVでこそ光るディーゼルエンジン

一方で乗り味や走り味に関しては、もはや登場から時間が経過してだいぶ熟成が進んだ感がある。空港でクルマを受け取って走り出すと、まず印象として伝わったのが乗り心地のよさ。

今回の試乗車はエアサス仕様ということもあって、それがより顕著で、大型クルーザーに載っているかのような穏やかで豊かなクルージングを味わうことができる。路面の段差や継ぎ目もしっかりといなして、ゆったりとリラックスしてどこまでも身を任せたくなるフィーリングだ。

ボルボ「XC90」の後ろ姿(筆者撮影)

もっともタイヤサイズが20インチと巨大なこともあって、一度キツい衝撃が入ると足回りはそれなりにブルブルすることも。また静粛性に関しては当然悪くないレベルだが、ライバルがどんどん新しくなっていく中にあっては、さすがに2014年登場の古さはどこかにあるわけで、高周波のシャーというノイズが路面によっては結構入ってくる印象を受けたのだった。

とはいえオーバーオールで見れば、まさにフラッグシップSUVにふさわしいゆとりと豊かさを存分に兼ね備えた存在であり、そこに最近のボルボらしい洗練された内外装が与えられた魅力的な1台である。そしてここにディーゼルの魅力がプラスされる。

ディーゼルエンジンならではのトルクの大きさによる力強さと燃費のよさ(と足の長さ)は、SUVでこそ光るので筆者はつねに「SUVはディーゼルで乗るべし」と言っているが、今回のD5ではまさにこれまでのXC90になかったものを手に入れたモデルである。その意味でも、試乗してすぐに感じたとおり「これぞベストXC90」といえる1台だった。

河口 まなぶ 自動車ジャーナリスト

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かわぐち まなぶ / Manabu Kawaguchi

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。2010年にWeb上の自動車部「LOVE CARS!」(部員約2200人)を設立し主宰。Facebook上に「大人の自転車部」を設立し主宰、2万人ものメンバーが参加。また同じくFacebook上に「初めてのトライアスロン部」を設立し主宰、1500人のメンバーが参加。TV、新聞、Web、各種自動車メディアに出演・寄稿を行うほか、YouTubeでは独自の動画チャンネル「LOVE CARS!TV!」(登録者数8万7000人)で動画を配信。Yahoo!ニュースに個人でも自動車に関する記事を発信している。趣味は水泳、自転車、マラソン、トライアスロンでは毎年アイアンマンレースを完走している。

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