LGBTQ初、深夜番組ホストを務める女性の半生 バイセクシャル公言、フォロワーは1470万人

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ファンから「スーパーウーマン」の通称で親しまれるシンの魅力は、そもそも生活に根ざした人間観察ビデオだ。例えば、『Girl Talk As You Grow Up(大人が喋る女子高生風トーク)』や、『5 Ways Parents Drive You Insane (あなたを困らせる親の行動5つ)』などがその例だ。

加えてシンの民族的背景であるインド、パンジャブ系を彷彿させる独特な訛りの言葉遣いや言い回しをジョークにした内容も、最初から変わらぬ彼女らしいものだ。『If Game of Thrones Were Indian(もし『ゲーム・オブ・スローンズ』がインド人だったら)』はその一つ。

大学院進学を辞め、両親から1年の猶予を与えられたシンは、コメディのシナリオ作りから撮影、編集、演技までを必死で覚えたという。その甲斐あって1年で軌道に乗ったものの、24時間365日、オン・オフの区切りのないソーシャル・メディアという業界で、多大なる要求に応えながら制作活動をすることは決して楽ではない。

万国共通の笑いを提供できる

シンは10年というユーチューバー人生の中で、様々な壁を乗り越えてきたようだ。2016年のBBCのインタビューでは、「視聴者が増えるにつれて、一つの文化に焦点を当てた(シンの場合はインド系)ものではなく、もっと幅広いコンテンツを取り上げるようにしてみた。しかしすぐにそんな必要はないことに気がついた」と語った。

「世界中の人のコメントを見ていたら、『私の親もそう言っている!』と、アメリカ人も、ペルシャ人や日本人も言っていた」。つまり、彼女が提供しているコンテンツは万国共通だということに気がついたという。

こうして、自分らしさを保ちつつ、コメディ俳優や歌手としても活動の場を広げていったシン。フォロワーが増えるにつれ、ドウェイン・ジョンソンやセレーナ・ゴメス、スティーブ・アオキといったセレブたちがこぞってビデオにゲスト出演するようになった。こうしたセレブの登場で視聴数は一気に伸び、やがて彼女自身がセレブへと成長する。

ニューヨーク・タイムズ紙は、NBCがシンを深夜番組司会者に抜擢した理由として「若者の視聴者数が伸び悩むテレビ局にとっての、視聴者獲得の施策だ」とする社会学者の言葉を載せている。

若い女性であり、民族的、性的にもマイノリティーであるシンが、多様なゲストにインタビューする全米放送番組を司会する。それもコメディ要素をたっぷり込めた番組になる予定だ。この抜擢がどのように評価されるか楽しみだ。

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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