白川は、近著『中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年』(2018年)で、次のように記している。
世界に発する知的拠点としてのシンクタンクよ、出でよ
白川がここで言おうとしていることは、次のようなことである。
日本は自らの経験と取り組みと教訓から学んだことを理論として、さらには政策として世界と共有する意思と能力を欠いている、したがって、その営みは世界の研究者が埋めてしまう。
日本発のアイデアを世界に発信し、世界と対話し、それを普遍化して、世界アイデアの“道具箱”に登録する必要がある。そのためにも、日本国内で実証に基づく調査・研究を盛んにし、開かれた議論を深める。独立した立場でそうした議論を主宰し、そこでの成果を世界に発する知的拠点としてのシンクタンクよ、出でよ。
今世紀、日本を取り巻く内外の環境はさらに厳しくなるだろう。中でも、次の3つの変化は「国の形」を変えるほどの巨大な衝撃をもたらすに違いない。
どの課題も、利害関心層は多岐にわたっており、それらに幅広く働きかけ、熟議を行う、それもできれば独立した立場からの「議論の場を主宰する力」(convening power)を必要とする。
多くの場合、技術革新やイノベーションは政府ではなく民間主導で駆動され、それを社会実装する際、政府と企業の間にガバナンス・ギャップが生じる。その果実を公共の「最大多数の最大幸福」に供するには、官と民の相互補完的連繋(PPP=Public Private Partnership)が求められる。
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