霞が関に依存しないシンクタンクが必要な理由 カギは政策起業力という「戦略と統治」のプロ

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しかも、現代においては、規範も標準もルール・メーキングもグローバルに行われており、そのようなグローバル・ベンチマーク構築には世界の専門家集団から認知されるテクノクラット・リーダーシップが要求される。

一方、地政学・地経学的課題に関しては、政府関係者を巻き込むトラック2協議(国際問題に関する民間有識者間の意見交換)やトラック1.5協議(政府関係者と民間有識者双方が参加する意見交換)による不断の政策対話による関与プロセスをつくることが大切である。そこではナショナリズムや一国主義を抑制し、共通の利害関心を手繰り寄せ、可能な限り理性的な政策対話を実施できる政策起業力と国際信用力が欠かせない。

そうした役割に継続的に取り組み、それを社会に広く伝え、そこからのフィードバックを摂取し、それを政策形成に入力する政策コミュニティーを構築しなければならない。とりわけ、実証的なデータに基づいて事象を分析し、解決策を提示し、それを政治的に可能にする政策起業力を発揮できる独立系のシンクタンク、できればグローバルに活動できるシンクタンクをつくることが大切である。

そこで必要なのは、政策を研究、立案、提言することにとどまらず、それを実現するために政治過程におけるトレード・オフと費用対効果と政策実施体制の機構的なありよう(institutional arrangement)をもあわせて検証し、解答を提示できる政策起業力である。それをグローバルなレベルで事業化できるシンクタンクこそがシンクタンク・パワーを発揮できる。

今までは「霞が関」が日本最大のシンクタンクだったが

日本では戦後、「霞が関」の官僚がそうした政策起業力を発揮してきた。その功罪はともかく「霞が関は日本最大のシンクタンク」と呼ばれたように、ここの頭脳集団が日本の政策を形づくってきたことは間違いない。

しかし、技術革新とイノベーションにおけるガバナンス・ギャップやテクノクラット・リーダーシップとグローバル人材の欠如、行政のサイロ(縦割り・タコツボ)構造ゆえの全体、つまりは戦略の不在、幅広い利害関心層を糾合するオープン・プラットフォーム型の政策対話の欠落、積極的な情報・データ開示による実証(エビデンス)本位の研究促進への無理解、そこでの政策と政策形成に挑戦する外部の競争と代案の不在――「霞が関」というシンクタンクは21世紀の巨大な課題に立ち向かうには適していない。

彼らの伝統的な暗黙知の政策起業力はむしろ外部の新たなアイデアを排除する壁になりかねない。霞が関は、政府の政策として確立し、予算がついたものをひたすら擁護し、踏襲するパス・デペンデンシーの砦となり、新たな政策アイデアと代案の隘路(あいろ)と化しつつある。

それに挑戦するシンクタンクが日本には求められているのである。

世界におけるシンクタンク・パワーは、従来、アメリカと英国の両国が独占状態を占めてきた。

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